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湖へ2。

ドアを開けるとフードを被ったクロがいる。


「おはようにゃ」

「まだ鐘も鳴ってなくないか」

「楽しみで全然眠れにゃかったにゃ」


 遠足前に眠れないタイプらしい。

 そう思ったが10年くらいまともに休息していないのだから仕方ないか。


「まだ外へ出る木簡を発行する役所も開いてない、ちょっと寝ていけ」

「だから眠くにゃいにゃ」


 なら強く言わなくてもいいか。


「もう朝飯でも行くか? 食酒所は冒険者向けだからずっと開いてるみたいだから」

「行ってみたいにゃ」


 そういえば外見のせいで一人で外食もできなかったのか。

 想像するだけで俺が疲れてくるようだった。


「じゃあ行こうか、着替えるから待ってくれ」


 パッと着替えを済ませてカバンも持つ。

 今更クロに着替えを見られても何でもない。


 早朝の食酒所は当然ほとんど人がいない。


「ほい、メニュー」

「ありがとにゃ。・・・・・・ここずいぶん安いのにゃ?」


 来てからずっとここで食事をしてきた俺には普通の金額だと思っていたが、やはり安いらしい。

 もしかして本当は一般人は入れなかったりするのか?


 そんなことを考えているとふいに店内が暗くなる。

 何か異常かと思ったが、すぐに明るくなった。

 見れば黒い筋に手を当てている人がいる。

 魔力切れっていうやつだろう、定期的に魔石には魔力を入れなければ動かないらしいし。


「驚いたにゃ。急に暗くにゃるし、明るくにゃるし」

「魔石って一般的じゃないのか?」

「たぶんにゃあが世間には疎いのにゃ」


 貧しい普通の生活はもっと不便らしい。

 俺はまだ不便なりにマシだったのだ。

 本当に親切なギルドからのスタートで助かった。


「よくわからんからアキラのオススメでいいにゃ」


 メニューをこちらに渡しながら言う。


「ならウインナーがいいかな」


 懐かしい、忘れもしない異世界初めての朝食はウインナーだったと思う。

 俺もこんな感じでマレインと食事をした気がする。

 注文してほどなく料理が運ばれてくる。


「うまいにゃ。・・・・・・アキラはいつもこれ食べてるにゃ?」

「そうだけど?」

「ずるいにゃ。にゃあのところは倍くらい取られてるにゃ」


 ・・・・・・もしかして店の言い値で食べているのではなかろうか?


「なあ、・・・・・・もうちょっと金が溜まったら2人で暮らすか?」

「急ににゃにを言いだすにゃ」


 成り行きとはいえ、一応俺は責任を取るつもりでいる。

 いつまで一緒にいられるかわからないが。


「・・・・・・にゃあはあの時死ぬつもりだったにゃ。金さえくれれば、にゃあのことをアキラが気にする必要にゃいのにゃ」

「いや、俺は繋がった縁を放すつもりはないよ」

「アキラは詐欺に引っかかるやつにゃね。にゃあが嘘ついてたら破滅にゃ」


 俺に性善説の傾向があるのは分かっている。

 だが人を信じて死ぬならそれでいい。

 たとえ異世界であっても。


「・・・・・・ありがとにゃ。・・・・・・ところで支払いをじゃんけんで決めようにゃ」

「なんで? 割り勘でいいんじゃないのか?」

「タダでご飯を食べてみたかったにゃ。お人よしのアキラに負けるわけにゃいのにゃ」


 そんな理由でやるのか。


「これと、これ、この3つでいいのか」


 グー、チョキ、パーの3つを見せる。


「あってるにゃ、宝石、ハサミ、布の3つにゃね。宝石は布に負け、布はハサミに負けるにゃ」


 若干違うものだがルールが同じなら問題なさそうだな。


「いくにゃ、じゃ~んけん」


 俺はチョキ、クロはパーだった。


「にゃんでにゃ! 優しいアキラは負けとけにゃ」

「そういわれてもな」

「まあいいにゃ。2人分でもいつもの1食と変わらん値段にゃ」


 別に何も言われなければ俺が勝手に全部出していたのだが。

 余計なことを仕掛けてきたやつが悪い。


「ふ~、満腹にゃ」

「よかったな」

「毎日、店でこんなに食べたら借金で終わりにゃ」


 本格的に一緒に暮らすのも視野だな。

 人が栄養不足で弱っていくのなんて見たくない。

 雑談していると鐘が鳴る。

 少ししたら人も増えるし、役所へ行くか。


「じゃ、役所へ行こう」

「お会計にゃ」


 クロから小銅貨を受け取り俺が支払う。

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