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獣人の家。

「ダン、これは美味いな」

「いつも感情がわかりにくい兄貴が喜んでくれるなんて連れてきたかいがあったすね~」


 ん? 盆と皿の間に名刺代の紙が挟まっている。

 どうやら夜の鐘のあとという言葉と、住所と部屋番のようなものが書いてある。

 夜の鐘の後にこの住所に向かえばいいのか?


「なあダン? この紙に書いてあるところに行けばいいのか?」

「ああ勇者様の呼び出しっすよ~、お金はちゃんと持っていくんですぜい」


 酔っているからか若干怪しいが金を持ってここへ行けばいいらしい。

 いつの間にかダンもステーキを食べて終えていた。

 食事を終えて満足した。支払いをして店を出る。


「ダン、酔っているみたいだが大丈夫か?」

「だあいじょうぶっすよ」


 ダンを彼の部屋まで送ってから近くにあった日時計を見る。

 夜まで2時間くらいか、ちょっと早いが銭湯へ行こう。

 ちゃちゃっと銭湯で湯を浴びてから、部屋に戻って少し多めにお金を持つ。

 大銅貨5枚と中小銅貨3枚でいいだろう。

 名刺のようなものに書かれていた場所を先に地図で探しておく、さっきの北西区の真ん中あたりだ。

 そうしていると鐘が3回鳴った、向かってみよう。


 書かれた場所は北西区にあるアパートのような複数人で住むタイプの建物だった。

 場所は部屋の番号的にこの2階か?

 204号室、そう書いてあるのでそこをノックしてみる。

 少ししてドアが開いて住人が顔を見せた、さっきの給仕の猫の獣人だった。


「にゃあ? ホントにきたにゃ!」


 俺が何か言う前に手を引かれて部屋に連れ込まれる。

 部屋はまあまあ酒臭い。

 部屋は辺りに酒瓶が転がっている有様だった。

 そのまま猫娘に両手をつかまれてベッドに押し倒される。見た目よりはるかに力が強い。

 緑の目に少し見つめられたがそのまま口付けされて、勢いで体を重ねた。


 一段落して半裸の猫娘に言われる。


「にゃあはもう満足したにゃ。さあ一思いにやってくれにゃ」


 首を伸ばして差し出される。

 その体は震えていた。

 俺はその口に口付けしていた。

 すぐに猫娘に振り払われる。


「なんにゃあ! もう終わりでいいっていってるにゃあ!」


 とても強い口調で言われる。全く意味が分からなかった。


「ちょっと待ってくれ。お互い何か嚙み合ってないんじゃないか」

「勇者はにゃあを殺すんにゃろ、とっととするにゃ!」

「なんでそんなことをするんだ?」


 猫娘は泣き始めてしまった。

 俺は当然の疑問を口にしたつもりだったのだが。

 とりあえず抱きしめてみる。

 少し落ち着いたらしい。今度は普通に喋ってくれた。


「お前はこの肌を見てここに来たんじゃにゃいのか?」

「なんで?」

「にゃあはこの肌のせいで魔王の手先扱いされてる、この肌の色のみんなはそうやっていわれるにゃ」


 どうやら肌の色で差別や迫害をされているようだった。

 ゆっくりと話を聞いてやる。

 話を聞いていると、俺の黒い髪を見てついに勇者が殺しに来たのだと思い込んだらしい。

 10年くらい前、肌の黒い耳の長い偉いやつが魔王側についたせいで、黒い肌は全員魔王側というレッテルを張られた、とのことだ。


「あの日を境に、にゃあは貴族から一気にどん底にゃ。あんな店で働いても客も取れないし、限界だと思ってたらお前

が来たにゃ」

「俺はそんな話初めて聞いた。この世界は人間も獣人も差別無く仲良く暮らしていると」

「そんにゃんあるはずにゃいにゃ、それだったら今までのにゃあの暮らしはにゃんだったにゃ?」


 この世界にも差別はある。それが現実だった。


「こんにゃに喋ったのは久しぶりにゃ、お前はにゃにも気にしにゃいのか?」

「何を気にするんだ? 別にキミが悪いことはしてないんだろ?」

「変わってるんにゃ。にゃあを殺さないっていうんならお前の名前を教えてほしいにゃ。一生忘れにゃいからにゃ」

「アキラ、それが俺の名前だよ」

「アキラ、覚えたにゃ。にゃらもう金を置いて出てってくれにゃいか?」


 そう言われたので大銅貨3枚を手にのせてやる。

 すると猫娘はまた泣き出してしまった。

 少なすぎたか? 現代だと3万円くらいが相場だと思っていたが。


「アキラはそんにゃににゃあを気に入ってくれたのにゃ? もしかして身請けしてくれるにゃ?」


 逆だった、渡しすぎたのだ。

 だが渡した手前返せとは言わない。


「ごめん、流石にそれはできないかも」

「ぜんぜんいいのにゃ! にゃあ、アキラ泊まっていくかにゃ?」


 ものすごい変わり身の早さだ。


「いや、悪いけど今日は帰るよ。今ギルドの寮に住んでいるんだけど、何も言わずに出てきたから帰らないと心配されるかもしれない」

「わかったにゃ、じゃあまた来てくれにゃいか? にゃあは普通に喋れる人が欲しかったのにゃ」

「いいよ。話相手は俺も欲しかったし」


 こうして俺に獣人の友人?ができたのであった。

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