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ボッチャ4。

「勝てるといいっすね」

「始まるみたいだぞ」


 試合の組み合わせは、赤の選手が背が高い女性、青の選手は中肉中背の男だ。

 正直なところ、どちらが勝つか全く予想できない。

 

 先行は赤だ、独特の横投げで投げている。

 試合は順調に進み、まずは青が1点取った。


「いい感じじゃないか?」

「初めに有利なのはいいっすね。相手は守れなくなりやすから」


 次のセットは赤が1点取った。

 これで勝負はまだわからない。

 おそらく後攻が有利なルール。

 お互いに最後の1球、どちらも近いのは1球ずつ、これで近いほうが得点になる。

 赤の選手は2点を狙う選択をした、下投げで確実に得点圏へボールを投げ込む。

 これで赤が2球、青が1球だ。

 青が赤を弾いて、かつ自分の玉が近ければ勝ちだ。


「これは延長戦っすかね」


 今回のセットはボールが右側に極端に寄っていた。

 青の選手の男は、今までとは違う左手でボールを横投げする。

 どうやら両利きだったらしい。

 確かに今のボールの位置的に左からぶつけると、他のボールに当たって止まる可能性が高い。

 男の放ったボールは赤のボールを弾いて得点圏から出して、自分のボールは白いボールの一番近くに付けた。

 青側が2点取って試合終了だ。


「男のほう、うまくやったな」

「いやー、助かったっす」


 木札を渡して金を受け取る。

 こうして俺たちは賭けに勝ち、小銭を増やした。


「兄貴、せっかくだから最後もやってきましょう」


 3試合目、赤側は1.1倍の全身入れ墨の獣人と、青側は左腕のない隻腕の1.8倍の選手だった。

 とても見た目はわかりやすいマッチだ。

 だが、ボッチャは力があれば勝てるわけではなかったはず。

 片方の腕がなくとも試合に出るだけの自信はある、ということだ。

 何かを感じて俺は、


「青側に5点差で、大銅貨2枚」

「・・・・・・正気っすか兄貴?」


 さっき勝った分も入れて大きな賭けに出た。

 手持ちのほとんどを入れる。

 勝てば3.6倍、大銅貨7枚以上になる。

 俺は青、5点差、大銅貨2枚と書かれた魔石入り木札を受け取る。


「ないっすよ。少なくともそっちが5点差にはならないっす」

 

 ダンは自分の賭けた赤の5点差、中銅貨5枚の札をヒラヒラ振りながら言う。


 ダンのその言葉と裏腹に隻腕の選手は正確に相手のボールを打ち、自分のボールを白いボールに近づける。

 相手のボールを遠ざけ、白いボールも動かし、自分のボールをさらに近づけるトリックショット、まず3点取って見せた。

 会場からはどよめきやら悲鳴やらがあがっている。

 まさか投げるバランスの取れなさそうな片腕の選手が強いとは、誰も予想していなかったらしい


 次のセット、獣人の選手は何とか点を取ろうと、ただ力任せにボールを投げつけているだけだ。

 明らかに精彩を欠いているプレー、勝てるわけがない。

 それを見ていた観客からヤジが飛ぶ。

 また青が2点、もう5点取っている。

 最大6点なので、少なくとも赤が勝つ望みはほぼなくなった。


「・・・・・・こんなことあるんすね」


 最後の1セットも青が2点取って完封だ。


 俺は労せずして2枚の大銅貨、約2万円を大7枚と中2枚の約7万2千円相当に増やすという体験をしてしまった。

 こんな簡単な賭けはもう2度は無いだろう。

 これ以降、賭けはしないようにしよう。

 人生が狂ってしまう感覚を味わうのはやめだ。


「ダン、食酒所でなら好きなもの食べていいぞ」

「まあ兄貴が勝てたならいいか・・・・・・」


 こうして俺はこの世界の娯楽である賭けボッチャを体験した。

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