鍵がない。
少しぼうっとして地図を見ながら帰り道を歩いていたら、すれ違いざまに肩がぶつかってしまった。
「すみません」
ぶつかったのはフードを被った人だった。
フードを被っているのは寒いからだろう。
そう思って寮へついてから気づく。
ズボンのポケットに入れていた部屋の鍵を紛失している。
どこでなくしたのだろう?
とりあえず、まだギルドが開いているのでフマルへ相談する。
「鍵をなくした、ですか? 今日はどこへ行っていたんです?」
「えっと、上流区の絵描きのところへ行きましたけど」
「それだけですか?」
「あ~帰り道にフードを被った人とぶつかりました」
「上流区帰りですよね? たぶんその時に盗まれたんじゃないですか?」
金持ちと間違われて盗られたのか。
余計なところへ行くものではないな。
「一応明日、マレインに絵描きのところへは聞きに行ってもらうとして・・・・・・」
フマルは階段上を見て、
「ちょっと上のラベン様に対応を聞いてきます」
そう言うと、上のラベンに話をしに行った。
数分後だろうか、フマルが戻ってきて、
「予備の鍵がありますからアキラ様は部屋に戻れはします、が、おそらく犯人は部屋を突き止めて盗みを働こうとするでしょう」
「その時犯人と鉢合わせるとアキラ様だけでは危険すぎます」
「なので、犯人をおびき寄せて捕まえたいと考えています」
不注意のせいでまあまあ大事になってしまった。
「とりあえず、今日は隣の部屋を使ってください。今の部屋の中はいったん移しましょう」
というわけで、部屋の物を隣へ移した。
ついでに使われていなかった部屋のため、中を掃除をする。
「これでいいですかね? 明日、マレインに聞いてもらった後に見つからなかった場合、元の部屋に仕掛けをします」
「俺は普通に街を歩いていいんですかね?」
「はい。また上流区を歩いてみてください。おそらく後をつけられるので、しばらくしたら昼間に部屋を漁られるでしょう」
見事に釣れそうではある作戦だ。
「鍵が入るのは一番奥の部屋だけなので、そこにだけ仕掛けをすればいいでしょう」
そんなやり取りをしていた翌日、
「アキラ様、ありましたよ。絵描きの方が拾っておいてくれたそうです」
昼間のギルドでマレインに鍵を渡される。
「見つかってよかったじゃないですか」
俺は一切触った覚えのない、ズボンのポケットの中だぞ?
絵描きに盗られていた可能性があるが真相は闇のなかだった。
これからは上流区へいくのはやめよう。




