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明かされる能力。

 カードの大きさは名刺より大きいくらい。

 金属製なのか少し重たくすべすべしていて何も書いていない。

 どうすればいいのかわからない。


「どうすればいいんですか?」

「血を一滴たらせば浮かび上がります。厨房から針か何か借りてきますね」


 そうフマルから言われ、フマルは厨房に木串か何かをもらいに行ったようだ。

 と、ラベンの食べているものを見ていたら俺も腹がすいていることに気づく。

 じっとみていたのをラベンに気づかれたらしく、


「アキラ様、お腹が空いていらっしゃるようですね。おーいこちらの方に肉ランチを1つ!」

 

 と気を利かせラベンがウェイターに注文していた。


「お待たせしました。短めの鉄串を借りてきました。あ、ラベンさま私も軽食食べていいですか?」

「構わん」

「やた。じゃあえっとサンドイッチお願いします」

「ではみんな食べ終えたらカードを見てみるとしよう」


 そして料理がカウンターに運ばれてきた。

 内容は厚さ5㎝はありそうなベーコンの厚切り、豆入りスープとレタスのような葉のサラダ、それに固そうなパン、あとはグラスに入った水。

 もちろん食器は木皿に金属のナイフとフォークだ。

 ベーコンの味付けはグレービーソース。


「いただきます」


 俺は腹が減っていたのか味わう間もなくあっという間に完食する。

 隣のフマルもハムとチーズの分厚いサンドイッチを完食していた。


「さて腹も膨れたようだし本題といこう」

 

 とラベンが切り出すので、俺は鉄串で左手の人差し指を軽く刺し、プツと出た血のしずくをカードに付ける。

 すると徐々にカードに俺のプロフィールのようなものが浮かびあがる。

 内容はさっき聞かれた問診表のとおりに近いが、能力という欄がある。

 顔写真は入っていないが見た目は車の免許証に近い、運転できる車の欄が能力となっていて10ポイントが最大の棒グラフのようだ。

 能力欄は、筋力、器用さ、敏捷さ、知力、魔力、幸運の6項目だった。

 ポイントは筋力2、器用さ1、敏捷さ1、知力2、魔力4、幸運3となっていた。

 横から見ていたラベンが難しい顔をしていた。


「ううん、とてもじゃないが勇者候補様の能力とは思えないな。私が見てきた方々は大体7~8が平均だったと思うが、たしか1は一般人より低いくらいだという話だ。そもそもそこらのテーブルに座っている冒険者連中のほうがよっぽど能力は高いぞ」

 

 とラベンは言うと、カウンターから立ってテーブル席のほうに行き一人の女性を呼んできた。

 ゆったりとした真っ黒なローブを着ている、いかにも魔法使いといった女性だ。

 整った顔、に肩くらいまでのウェーブのかかった茶髪で目の色は青。

 かなり若そうで10台後半くらいかもっと若いかもしれない。

 個人の感想だが、かなり可愛い。

 

「彼女はアイフェ、若いがこの街でも屈指の魔法使いだ。冒険者カードを見せてごらん」


 とラベンが促すと、「はいよと」アイフェは頷いて冒険者カードを見せてくれる。

 俺のカードとは少しフォーマットに差はあるが、能力は書いてある。

 筋力1、器用さ7、敏捷さ2、知力8、魔力9、幸運5となっていた。


「勇者候補様のを見せてもらえます? あ、アタシはアイフェ、魔法使い。候補様の名前は?」

「名前はアキラ。やっぱり特別な能力は何にもないと思うんだが」


 面倒になってきたので苗字は省略することにする。

 アイフェは「ふうん」といい俺のカードを見る。

 

「魔力が4もあればちょっとは違うはずだからわかるかもしれないけどなぁ。アキラ様、手を触らせてもらってもいいかな?」


 そう言ってアイフェは俺の手に触ってくる。

 その時俺は息を飲んでアイフェの顔をまじまじと見てしまっていた。


「あれ? どっかで会ったことありましたっけ? 流石にそんなに見つめられると恥ずかしいというか」

「いや、何でもないよ。ちょっと見惚れてただけかな」


 と自分でも雑な返事をしたのは分かっていた。


「おお。勇者候補様に惚れられちった」


 などどアイフェは言っているが。


「うーん、言っちゃ悪いかもですけど魔力4も怪しいくらい、何にもないレベルでしたよこれ。多分1か2、下手すると0かも。もしかして元の世界には魔法がなかったりとか?」

「ああ、なかったよ」

「あちゃー。じゃあこれも怪しいもんですな。なんで勇者候補様なのにこんなに能力が低いんだろ?」

「それは・・・・」


 とここでこの街に来るまでのいきさつを話した。

 ただ、ゴースが討たれたところは伏せて急に落ちたことにしたが。


「ではやはり能力は未獲得ということになりますな。でもこれでは勇者候補様としての仕事も怪しいのでは?」

 

 とラベンが言う。

 確かにその通りだ。

 無能力ではどうやって魔物や魔王など倒すことができよう。


「えーと、言いにくいけど無能力の一般人だと、その辺の魔物どころか森林の野生生物ですら怪しいかもしれないよ。この勇者候補様だと冒険者の護衛が必要になるくらいには」

 

 とアイフェは言う。

 まあ現代でも熊や猪なんかは一般人では倒すのは不可能だから当たり前といえばそうだ。


「とりあえず勇者候補様なのには変わらないですから、これからの待遇は定められたとおりに行いますよ」


 フマルがそんなことを言ってくれた。

 無能力でも普通の待遇は受けられるらしい。

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