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雪の日は暇6。

「広いのに不便じゃないですか?」

「まあ・・・・・・そういっても決まりですからねぇ。私も馬車なんてほとんど乗ったことないですよ」


 自分の足が頼りになる世界、現代日本では考えられないだろう。

 ただでさえ高齢者ドライバーが増えているようなのに、こちらはそれどころですらない。


「自分で歩けないような人ってどうなってるんですか?」

「身寄りのない方は、だいたい魔法協会の方や教会が保護しています。一定の生活は保障されていますよ」


 フマルはあまりいい顔でない。

 何かあるようだが、俺たちが気にしてもしょうがないのだろう。


「もし、記憶が無かったりしたら、俺もそこへ行っていたんですかね」

「おそらくは。黒髪なだけ、なにかしらしてもらえる可能性は高いでしょうけど」


 ようは記憶喪失の勇者として扱われた可能性が高いということだ。

 どちらにせよ俺は普通の勇者待遇にはならないのだ。

 他の世界から来た証明ができる環境になっただけよかったと思おう。


「そういえばこの世界って自炊しないんですか? 毎食食べに出るじゃないですか」

「しますよ。といっても1人暮らしだと外で食べたほうが楽だし安いですから。そもそも寮のような場所だと炊事できるところが無いですけど」


 暖炉の火のつけ方は教わったから簡単なものなら部屋で作れると思ったが、


「基本的に店では小銅貨数枚で食べられますけど、材料から揃えると大変ですよ。鍋なんかも洗う場所が必要ですし」


 そう聞くと外で食べたほうが楽だな。

 元の世界では普通に料理していたから、そっちのほうが安上がりだと考えていたが、全部1から揃えるのはやめておこう。


「あと、米っていう食べ物ないですか?」

「わからないですね、少なくともこの街には無いと思います」


 仕方ないことだが、米がない生活を当分するようだ。

 パン食に慣れていかないといけないな。

 そう考えると早く帰りたくなってしまった。

 まあ自力では無理なのだが。


「そんな顔になるなんて、よほど美味しいんでしょうね」


 顔に出ていたようだ。


「アキラ様は食べることが好きなんですか?」

「どうでしょう? 普通の家に育っていますから舌は肥えてないとは思いますけど」

「お酒はダメなんですよね?」

「好んでは飲まないですよ」


 飲めないから飲む気もしない。

 気持ちよくなる前に気持ち悪くなるから。


「それならお金がかからなくていいですよ。この世界は娯楽の代わりにお酒を飲みますから、大体お金は酒代に消えるといっても過言じゃないです」

「付き合えなくてすいません」

「いえいえ、別に平気ですよ。お金かからなくていいな~と」


 娯楽の代わりということは遊ぶ場所もないのだろうか。


「何か時間の潰せる趣味とかはないんですか? これから雪の日が続くなら、部屋にいても暇でしょうがないんですけど」

「う~ん、そうですね~」


「例えばマレインはぬいぐるみづくりとかしていますよ。売ればお小遣いになって、時間も潰せますし」


 ぬいぐるみか、手先には全く自信がない。

 せいぜい雑にボタン付けできるくらいだ。


「なにか他には? できれば手先が器用じゃなくてもいいやつで」

「それがあったら私がやってますよ」


 確かにそうだな。

 ん? トイレに新聞らしきものがあったけど読書とかできないんだろうか?


「トイレに新聞ありますよね? 本ってないんですか? 異世界の本を読んでみたいです」

「ああ、あれは魔法協会が出しているやつで一般人向けじゃあないんですよ。紙がもったいないからギルドで引き取ってちり紙にしてるんです。本もこの街では識字率が高くないので出回ってませんね」


 時間潰しができるかもと思ったが、とても残念だ。

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