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冒険者ギルドと食事。

司祭が答える。


「私は教会へ戻って、会議を行わなければならないのですぐに出ます。勇者候補様が来たときの対応などは・・・・・・そこの門番のバニリンが聞いていませんか?」

「はい、司祭様。聞いておりますのでここからは私が話を換わりましょう。お帰りにはエフェドをお使いください」

 

 と年上門番のバニリンがいうと司祭は一礼して去っていった。

 代わりにバニリンが座る。


「ということでアキラ様、足も治してもらったところで冒険者ギルドへ行ってもらいたい。勇者候補は冒険者の延長みたいな扱いなんだ。その恰好だと寒いですが、そう遠くないので頑張って歩いてください」


 行くのはお約束の冒険者ギルドらしい、


「わかった、とりあえずそこに行けば今後の身の振り方がわかるのかな?」

「はい。場所の案内はコデイが行ってこい」

 

 若い門番が立ち上がりランタンを手にして、


「わかりました。じゃあ行ってきます」

 

 俺は若い門番、コデイについて門を後にする。

 外に出るとチラチラと雪が降っている。コデイの後についてランタンの灯りを頼りに歩く。

 少しあたりを見渡すと完全にレンガの建物が並ぶ街並みのようだ。

 この雪の中なので、当然人は全く見当たらない。

 寒空の中7~8分くらい歩いただろうか目の前に大きめの建物が見えてくる。

 見ても読めないはずの文字だが、看板に冒険者ギルドと書いてあるのが頭に入ってきてわかる。

 

 入り口のドアをコデイが開けてくれたので中に入る。

 中の右手には暖炉があって暖かい。

 受付らしきところの、受付らしき女性がカウンターにぐでっとしていたが、俺の顔を見るなりスッと背を伸ばして、


「いらっしゃいませ、何か御用でしょうか?」


 流石に慣れた対応だった。

 無理もない、普通の人間は雪の中外に出てわざわざギルドに用もないのだろうから。

 ドアを閉めて後ろから来たコデイが話す。


「こちら勇者候補様で冒険者ギルドで何か受付や手続きがあるということなんだけど。あとは任せちゃっても大丈夫?」

「こんな日に何かと思ったら勇者候補様が来られたんですね。わかりました、やっておきます」

「じゃあオレは門に戻るから。勇者候補様をよろしく頼むよ」


 そう短くやり取りしてコデイは来た道を戻っていったようだ。


「では勇者候補様、あなた様のお名前を教えてください。あ、私はフマルと言います」

「木津川アキラ、アキラでいいよ」

「アキラ様ですね。え~と、あった。この紙に書いていただいても?」

 

 と言われ役所や病院などでよくある問診票みたいなものを出される。

 書いてあることは分かるが異世界の文字を書けるわけがない。

 漢字を読めるけど書けない感覚に近いと思う。


「読めるけど書けないと思う。代筆を頼めますか?」

「ええ、もちろん。でも勇者候補様ってその辺りの力は頂いていないのですね。実はこの街でアキラ様のような勇者候補様の受付は初めてなもので」

 

 そこからは問診表のとおりに聞かれたことに答えて代筆してもらった。

 名前、木津川アキラ、年齢、30歳、髪の色、少し白髪交じりの黒、眉の色、黒、瞳の色、黒。


「あとは身長ですね」


 そういってフマルはカウンターの後ろから巻き尺のようなものを持ってきて、カウンター横から出てきてこちらに来る。

 

「端を頭のところで持っていてくださいますか?」

「はい」


 カウンターは少し高くなっていたのだろう、俺の身長は170㎝くらいだがフマルは145㎝くらいしかないようだ。

 フマルの見た目は20代前半くらい先ほどの門番と変わらず金髪に緑の目、髪はフィッシュボーンだったかの形に編んでいる。

 服は長袖ブラウスっぽいのにロングなスカート、短めのケープを羽織っていた。


「はい、測れました。ありがとうございます」


「今、足を拭くものと靴と靴下を用意しますね」

 

 一通り終わったようだ。

 フマルが布切れと奥から靴と靴下を持ってきてくれた。

 寝てそのままの恰好だったからずっと裸足だったのだ。

 門番に浮浪者に間違われるのも無理はない。


「あとは冒険者カードの作成なのですが、これは勇者候補様専用のものがあって・・・・・・あー、あれはラベンさんに聞かないとわからないや。すみません。ちょっと上司に聞かないと出てこないですね」

「なにも急いでないし、わからないので全部お任せしますよ」

「多分隣の食酒所にいるのですぐ呼べると思うんですが、せっかくですしアキラ様も行きますか? きっとしばらくの間はそこでお食事なさると思うので」

「ではついていきます。すぐそこならそんなに寒くもなさそうです」


 そういってフマルと一緒に外に出てすぐ横にある食酒所とやらに向かった。

 受付に誰もいないが特に問題ないだろう。

 食酒所の入口からは煌々と灯りが漏れている。

 というかこの寒いのに入り口は西部劇に出てくるあのドアだ、たしかスイングドアとかいう。

 フマルがキイという音がするドアを開けて先を譲ってくれる。

 

 中に入ると左手に厨房、正面にカウンター、その後ろに2階への階段、右手側はテーブル席になっていた。

 席の数は全部で50人分くらいだろうか。

 カウンター席にもテーブル席にも少ないが人がいる。

 何やら獣の耳も見えるがそういう世界なのだろう。

 フマルはカウンターに座っていた少し髪の薄い小太りの男に声をかけた。

 食事中のようだ、少し酒の匂いもする。


「ラベンさん、仕事ですよ。勇者候補様が来られたんです。冒険者カードはどこですか」

「ん?おおフマルか、おっと勇者候補様初めまして、ラベンといいます。食事中ですみませんね。あれね、金庫に入ってるんだわ。ちょっと待っててください、すぐ持ってきますんで」


 男は酒が入っているのか上機嫌らしく早口でそう言ったのちに外に出ていく。


「昼間からお酒なんて困っちゃいますよね。雪で誰も来ないからって、まだ仕事中なのに」

「まあ、そうですね」


 と適当に相槌を打ったが俺は気になっていたことがあったのだ。

 ドアがあれだったのに暖炉などの暖房機器が見当たらないが明らかに外より暖かいのだ。

 おそらく室温は20度くらいだろうか、それに何やら天井に光の出る宝石のようなものがあり、とても明るい。


「何もないのにずいぶん暖かいんですね。それにとても明るい。さっきの門番は火のついたランタンを持っていましたが他のものが普及しているんですか?」

「ああ、魔法による暖房が効いているんですよ。確か地下にあるんじゃなかったかな? 明かりも一緒でそこの黒い筋に魔力を流し込むと天井の魔石が反応して明るくなるようになってるんです」


 よく見ると壁伝いに細い黒い筋が通って宝石へと繋がっていた。

 中世くらいの世界観だと思っていたのに魔法というのはずいぶん便利なものがあるらしい。

 とそんな会話をしているとラベンが戻ってきたようだ。


「戻りました。これが勇者候補様用の冒険者カードです。なんでも最近司祭様がゴース様から賜った新しいものらしいです」


「せっかくですからここでやってみてくださいよ。あなたの能力を私たちにも披露してください!」


 とラベンに言われる。

 おそらく能力は無いのだが。

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