雪の日は暇。
さて何から聞いてみよう。
考えているとフマルから先に質問がくる。
「アキラ様のいた世界について聞いてもいいですか?」
「そうですね・・・・・・この世界と違うところはたくさんあるんですけど、例えば魔法や魔力といったものは無いというのが常識でした。」
「じゃあ暗くなったら寝る、寒かったら厚着をしたり暖炉に寄ったりするだけということですか?」
「いえ、魔法や魔石のではなく電気や電力といった力を主に使っていました。この電気を利用して魔法というものがなくても、たぶんこの世界以上に便利な暮らしをしていました」
俺の知識では正確に伝えるのが難しいと判断し、とても簡単な説明になってしまった。
「もっとも、暖炉はありますし布団もあります。ただ、この世界と同じで暖炉よりも優れた暖房が誰でも使える状態で普及していました」
「私たちのこの世界では魔法はありふれたものですが、誰でも使えるわけではありません。電気というものは誰でも使うことのできる大きな力ということですね」
「そうです、まあ使った分だけお金はかかりますけどね。誰でも使えますが、誰でも簡単に作れるわけではないんです」
そこは魔法と大きく違う点だと思う。
大量の電気は基本自分で作れない。
ゆえに様々な工夫をして大きな電力を分け合って使っている。
「個人の魔法、みんなの電気といった感じですね」
「そんなところです。では俺からも質問します、この街は何という街なんですか? 俺はまだ街の名前も知りません」
「この街はテブル、という街です。王都などとは遠く離れた辺境の街、と言っていいでしょう。」
さらにフマルから街の説明を受ける。
「街の中の説明もしちゃいますね。まず、私たちがいるギルドは街の南西地区、役所などが集まっている区画です」
「次にここから北へ行った北西区画、そこは中流区でいろいろなお店があります。昨日行った武器屋なども北西の区画にあります」
「北東の区画、ここは領主様の家もある上流区画です。普通の人は用があまりない高級な住宅の多い区画ですね」
「最後に下流区画である南東の区画、ここの東端は特に治安も良くないですし行くことはしないほうが無難でしょう」
街の中でも区画で貧富の差があるそうだ。
「とはいえ私はギルドに近いし安いからという理由で南東に住んでいますし、街の人口の多数が南東の家に住んでいます。灯りのない狭い路地などに入らなければ危険はそうそうないと思いますけど、行く場合は覚えておいてください」
上流区と下流区が隣あっているらしいので、どちらにせよ東側に行くときは用心しよう。
「あとは、街には8か所の門があります。東西南北に4つとその間に4つで8つです」
「北には湖、東は川、南は森、西は草原でその先は農村地帯になっています。アキラ様はおそらく南から入ってきたのでしょうね」