1人で昼食。
買い物を終えマレインとギルドに戻る。
戻る途中に昼を告げる鐘が2回鳴る。
「もうお昼ですね、お腹も空いてきましたし」
「そうですね、ですが私はラベンさんに報告しなければいけないのでアキラ様はおひとりで昼食へ行ってもらうことになりそうですが・・・・」
マレインに昼飯は一人で大丈夫かと聞かれているようだ。
子供でもあるまいし、会計も見ていた。
たぶん大丈夫。
「わかりました、一人でも平気です。たぶん」
「そうですよね、髪の色も目立ちますし店員も気を回してくれるとは思いますが」
というわけでマレインと食酒所の入口で分かれて俺は一人で昼食を摂ることになった。
まあまあ緊張する、というか腹もあまり空いていない気すらしてきた。
入ってカウンターに座る。
メニューを見ると、品名と金額が書いてある。
「ご注文は?」
俺の前のカウンターにウエイターの男が来る。
「サンドイッチ、ハムとチーズの」
「かしこまりました、サンドイッチですね」
昨日食べたランチにしようかと思っていたが、緊張のせいか一番上のサンドイッチが口に出ていた。
こんなことも満足にできない自分が悲しい。
ほどなくサンドイッチがくる。
「お待たせしました。どうぞサンドイッチです」
サンドイッチ、水の入った瓶、会計用の木札が置かれる。
柔らかいパンにハム、チーズの挟まった大き目のサンドイッチだ。
口に入れると塩辛いハムに濃厚なチーズ、しっとりめのパンでとても美味しい。
現代日本ではコンビニどころか、パン屋でもなかなか出てこないだろう。
これが小銅貨2枚、約200円だというのは信じられなかった。
食べて、水を飲み干し満足して会計に向かう。
すんなり会計も終えて店を出る、何にも心配いらなかった。
「アキラ様、大丈夫でしたか?」
ギルドへ入るなりフマルに心配される。
俺はそんなに頼りなく見えるのか?
まあしょうがないか。
「大丈夫でしたよ」
肉ランチにしたかったところをサンドイッチにしたのを言わずに返事をする。
言わなければ何でもないのだ。
「そうですか、これからはおひとりで食事へ行ってもらっても問題ないですね」
「一人だと寂しいのでフマルさんについてきて欲しいです」
「冗談を言えるくらいなら本当に平気そうですね」
そんなやり取りをして部屋へ戻ることを伝える。
寮の部屋へ戻って荷物を置いて、中銅貨を8枚、買った布袋に入れて首から下げて部屋を出る。
中銅貨7枚をギルドから借りているのだ、返しに向かおう。
ギルドに戻ると奥の階段からラベンとマレインが降りてくるところだった。
「では昼食に行ってきます」
「ご苦労、私はまた上に報告してくる」
「いってらっしゃいませ」
そういって2人は裏から出ていく。
俺はカウンターのフマルに言う。
「借りたお金を返しに来ました」
「そうでしたね、中銅貨7枚です」
俺は首から下げた袋から中銅貨7枚を出してカウンターに並べていく。
「はい。確かに受け取りました」
「どうでしたか? 初めての街は」
「歩いた距離はそうでもないと思いますが疲れました。武器も持ちましたし明日は動けないかもしれません」
「あはは、お疲れさまでした。何かあったら呼びに行きますのでお部屋でゆっくりしていてください。」
「そうさせてもらいます。」
俺は寮の部屋へ戻る。
慣れない靴でそこそこ歩いたから疲れていた。
洗面所で手を洗ってうがいをして、靴を脱いで靴下も脱いでベッドに入る。
すぐに睡魔が襲ってきた。