おまけ#20
その日は大学の卒業式だった。
式が終わり、同期と共に研究室に戻ったアグリは、全員に挨拶を済ませてから集合場所に向かった。
集合場所にはまだノゾミはいなかったが、他の同期はちらほらと集まっていたので会話に加わった。
近隣地域出身の人もいるが、遠くから下宿していた人もいる。
一部の人を除けば、これが最後の集まりになるため、心残りのないようにしたい。
大した中身もない話をしているとノゾミが現れた。
思えばなんだかんだ長い付き合いである。
これからも続けていきたいところだ。
さて、全員が集まったことを確認したところで本題に入った。
このアカペラサークルでは、伝統的に卒業生へアルバムが贈られてきた。
当然自分たちもやったことがあるので予測はついていたが、嬉しいものは嬉しい。
最後に集まった全員で集合写真を撮り、ようやく解散となった。
「そういえばあの噂、アグリはどう思う?」
帰り道、そう言って最近起こっている奇妙な事件について切り出したとき、異変が起こった。
「……アグリ?」
振り返るとそこには誰もいなかった。
誰かがいた形跡すらもない。
ノゾミは何度も名前を呼びかけた。
しかし、返事が返ってくることはなかった。