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おまけ#18

 ある春の日。アイカは隣野市にある山を訪れていた。

 ユウカが気分転換に花見をしようと連れ出したのだが、一向に目的地に着かない。


「噂だとそろそろ見えてくるはずなんだけどな」


 ユウカはそう言いながら不思議そうにメモを見ている。

 道中に聞いた話ではいつ見ても満開の桜があるのだと周囲で噂になっているそうだ。


「所詮噂は噂だったんじゃないか?」


 そんなことを言っていると急に視界が明るくなった。

 そのまま近づくとすぐにその理由がわかった。


「綺麗……」


 そこには話に聞いていた満開の桜があった。

 光が差し込み虹色に輝いているように見える。


 視界が明るくなったのは、丁度その周囲だけ木が生えておらず、光が差し込んでいたからだろう。

 足元も他と比べて乾いており、表面を背の低い草が覆っていた。


 そんな風景だが、実際にこの場所へ来ない限り見ることはできないのだという。

 確かに気に留めたことはなかったが、事実なのかは検証が必要だ。




 ふと気がつくとユウカがリュックを漁っていた。


「せっかくだし、ここでピクニックしようかなって」


 いつもとは違う大きめのリュックを背負っていたのはそうした理由もあったのか。

 うっすらと持っていた疑問も解決したので、アイカはユウカを手伝った。


 レジャーシートの上にかごに入ったサンドイッチと紙コップを並べるとすっかりお花見ムードになった。いつの間にそんなものを用意していたのかと呆れながら乾杯をする。

 桜が一本しかないのは少し寂しい気もするが、まだ開花が発表されてから日も浅いため、仕方ないとも思える。


 こうして桜を眺めていると、思い出すことがある。


 高校生の頃、中庭にあった桜の木が七不思議の一つとして数えられていたそうだ。

 その桜は見る人によってはいつ見ても満開だと思われていたが、それは特殊な目を通したことによる。

 かつて合唱部員だった先輩が街を守るために姿を変えていたとのことだが、卒業式前日の事件がきっかけで解放され、現在は人間としての生活に復帰しようとしているのだという。


 この木もそうした過去を背負っているのかもしれないが、残念ながらアイカはそれを判別する術を持ち合わせていない。




「そろそろ帰ろっか」


 サンドイッチを平らげ一服した後、山を下りることにした。

 そもそもこの場所にはここ数日作業に没頭し続けていたアイカの気分転換のために来ていたのだ。


 久々に受けた刺激にインスピレーションが湧く。

 ユウカの言葉に作業のことを思い出したアイカは口角が上がるのを抑えきれなかった。




 最後に桜に挨拶をしてからその場を後にする。

 そうして二人はこれからの話をしながら帰路に就いたのだった。

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