おまけ#12
「久しぶりだな、俺」
自分と瓜二つのその姿を見たとき、ミドリは自分が用済みであることを悟った。
「まさか同じ大学にいたとはな」
「よく出会いませんでしたね」
「探してたんだけどな」
それから一年と少し経過したこの日、二人の「三枝緑」は学食にいた。
もちろんミドリが用済みになることもなく、二人は交流を重ねていた。
彼の名前は三枝緑。ミドリの片割れである。
かつてとある事情で二人に分裂したミドリは、中学に上がるまで共に過ごしていたらしい。
らしい、というのは、ミドリの記憶に全く残っていないことにある。
まあ、そんな嘘を吐いても仕方はないし、伝わってくる感情からしても本当のことだろう、とミドリは思った。
それはさておき。
「この歌、覚えてるか?」
そう言って彼が差し出したスマホにはかつてのミドリが投稿した動画が映されていた。
自分が投稿したものなので忘れるはずもない。
「これ、俺らが子供の頃に作ったんだ」
そう言ってミドリが聴かせたのは、まだ発表されていない続きの音声だった。
そうだ。
ミドリは在りし日のことを思い出していた。
二人が二人になってそんなに経っていない頃、恩師の勧めで曲を作ったことがある。
今にして思えば酷い出来だったとは思うが、完成したときには感慨深いものがあった。
「今度、一緒に歌わないか」
未だに音楽は続けているという彼は、少し格好つけた様子で提案した。
「いいですね。それなら、動画を投稿してもいいですか?」
「いいよ。じゃあ、いつ録る?」
「ひとまず音源を用意させてください」
どんどん話が進んでいきそうになったが、それと同時に必要なものが浮き彫りになっていった。
ひとまず、歌う部分の楽譜を完成させてからということにはなったが、こういうことがやりたい、ああいうことがやりたい、などと、二人分の希望が次々に出てくる。
今回は正式な話し合いの場として設けたわけではないので、一応記録はしておいて、その辺りは後日話すことになった。
時々横道に逸れながらも、決められることは決め、長いようで短い休憩時間は過ぎていった。
できれば毎日でも話したいところだが、それぞれ都合というものがあるので、今後は週一で企画会議という名の昼食会を開くこととなった。
しかし、それから間もなく、そんな平穏は壊されてしまうことになる。




