おまけ#10
春休みも終盤に差し掛かったある日、十人のシキサイ能力者たちは廃研究所に集められていた。
待ち合わせ場所はいつもの部屋で、しかし、集めた本人は姿を見せない。
心配になった一同は彼女を探しに行くことにした。
こういう時のルカが役割を振り分け、部屋を出ようとしたとき、扉が開いた。
「ごめん!待たせた!」
そう言いながら部屋へと飛び込んでくるトオル。
勢い余って丁度扉の前にいたアグリと衝突事故を起こしてしまった。
「ごめんね。大丈夫?」
「はい……トオルさんこそ、怪我はありませんか?」
「ええ。心配してくれてありがとう」
そんな先輩の様子に、一同の心配など一瞬で吹き飛んでしまった。
「それで、なぜ私たちを集めたのですか?」
カスミの発言で一度はゆるんだ空気に緊張が走った。
「そう、今日皆さんに集まってもらったのは、他でもない皆さんへ、ある提案があるのです」
わざと仰々しく語り始めるトオルに、一体何を考えているのだろう、自分たちにできることなのだろうか、などと、各々思考を働かせる。
「ね、グループを組んでみない?」
ふっ、と表情を緩め、トオルは彼らの今後に深くかかわる提案をした。
「ほら、みんな元々ユニット組んでたり、バンドやってたりするでしょう?その運営を私にさせてもらいたいの」
そんな彼女の説明を聞いて、一同が示した反応は十人十色だった。
「マネージャーをしてくださるということね」
「悪くない話だ」
流石、その辺りの事情に他のメンバーと比較して頭いくつ分も飛びぬけて詳しいユウカとアイカは、すぐにその提案の意味を理解した。
トオルの能力についても十分承知しているので、かなり前向きに検討している。
「確かに、その辺りの調整を行っていただけるのであればありがたい話ではありますが……」
「いままでも僕らでなんとかできてるしなあ」
この一年で依頼が増えてきたミドリは猫の手も借りたいほどに忙しさを感じていた。
それは相方であるユカリも同様であったが、現時点で問題が起きていない分、人任せにすることに対しては消極的のようだ。
「しかし、この人数となるとあなたの負担にはなりませんか?」
「それは大丈夫。信頼の置ける協力者がいるから」
十人のまとまりのない人間をシキサイに関わらないところまでサポートしようとするトオルの身体を心配するカスミに、トオルは隙のない返答を繰り出した。
しかし、その謎の協力者に対する不安の声も漏れ聞こえる。皆もよく知っている人物だと付け加え、この話を終わらせたトオルは、再び見守る姿勢を取った。
それなりに時間が経ったが、この人数だ。話はなかなかまとまらない。
それに加えて、本人のいる前で迂闊なことは言えないと、一言二言話したところで皆黙り込んでしまった。
「少し出ていてもらえませんか?」
そんな空気を変えようとアカリがお願いすると、トオルはそれもそうだと部屋を離れた。
「と、いうわけでその船に乗ることにしました!」
廊下にいたトオルを呼び戻し、椅子に座らせるやいなや、アグリは話し合いの結果を報告した。
「乗ってくれてありがとう。とりあえずみんなにはグループ名を決めてほしい」
その言葉に一同は同じ言葉を思い浮かべた。
「やっぱりさ」
「あれしかないだろう」
「そうですね」
アグリを筆頭に、言葉にせずとも通じ合った十人は、たった一つしかない答えを出した。
「『透明な虹』」
こうして十人のシキサイ能力者たちは、名実ともにチームとして動き始めることになったのだ。




