おまけ#02
あれから一か月くらいが過ぎ、ようやく落ち着いてきた頃、サークルの方も本格的に活動が始まった。
そんな最初の活動日。アグリは渡された楽譜を見て自分の目を疑った。
よく知っているどころの話ではない。
自分たちにとって最も重要と言っても過言ではない。そんな曲だ。
それは、虹見高校合唱部に所属していたことがあれば誰でも知っているあの曲だった。
これは見過ごせない、とアグリはその場の勢いでサークル長を問いただした。
少し待ってほしいというので、その間に楽譜をちゃんと見る。
アカペラについてはよく知らないが、結構がっつりアレンジされているような気がする。
何度も歌ってきたというだけではない。
代々歌い継がれてきたその裏には、歴代の部長にだけ伝えられてきた重要な役割があった。
そうしているうちにサークル長が戻ってきた。
学生ホールの外へ招かれ、電話を受け取る。
「はい……お電話代わりました……八神と申します」
『こんばんは。あなたが曲について聞きたいっていう八神さんですね?』
「はい、そうです」
『私はスダです。初めに、理由を教えてもらってもいいですか?』
「はい。……ええと、この曲を歌ったことがあって、……それで、何か関係があるのかと思って、……どうなんですか?」
『もしかして、虹高の卒業生?それも合唱部員だった……』
「あ、はい!」
『この前は大変だったでしょう?お疲れ様です』
「あ、ありがとうございます……」
『それで本題ですね。一言で言うと、どちらも私が作りました。シキサイってわかりますか?』
「はい、使えます」
『それなら話は早いですね。あれは、要は誰でもシキサイを使える曲。先日のような事案への対策として私が用意した秘密兵器なんです』
「やはりそうでしたか」
『シキサイ能力者なら効果は薄かったかもしれませんが、予備ですからね』
「そうですね」
「あの、この話を私と同じ元合唱部のシキサイ能力者へ伝えてもいいですか?」
『そう……ですね、お願いします。協力者は多い方がいい』
「わかりました」
そうして話を終えたアグリはサークル長経由でスダと連絡先を交換し、遅れながらも練習に加わった。
元の曲を知っている分有利なようで、ああなるほどこうなっているのか、とじきに慣れてきた。
それはそうと、そもそもアカペラに慣れていないので、これでいいのかという気持ちはあるが。
最後に、できたところまで一回合わせてみようということになった。
一回目なのでそんなに進んでいないが、パート練習ばかりだと何をやっているのかわからなくなるので、必要だとは思う。
サークル長の挨拶をもって今日の活動が終わり、解散となった。
ミドリとユカリにメッセージを送り、アグリはキミと家路についた。
この時のアグリは、まさかあの曲の本質を再び引き出すことになるとは思ってすらいなかった。




