おまけ#01
今回から、上手くいった未来のお話を少しずつお届けしていきます。
あの長くて短い一日から一か月が過ぎた。
事件解決のため奔走した十人は無事に高校を卒業し、それぞれの道へと進んでいった。
その一人であるアグリは地元の大学に進学し、さっそく忙しい日々を送り始めていた。
そんなある日、部活の説明会があった。
残念ながら合唱部はなかったが、同じく歌声を扱うアカペラサークルに興味を惹かれた。
そこで、体験会を実施するというので、見学に行くことにしたのだ。
「アグリ、久し振り」
当日、アグリが活動場所に着くと、そこには自分のよく知る顔があった。
五条希望。彼女とは合唱部の仲間を通じて知り合った。
元は夜明け会側のシキサイ能力者だったが、色々あって今は正しく自分たちの仲間だ。
そういえば同じクラスの仲間と共にバンドをやっていたな、とアグリは思い直した。
体験会には結構人が来ており、会場は少し混雑していた。
部長(サークル長?)とみられる人物の一声でぞろぞろと外へと流れ出す人の列に紛れ、移動する。
挨拶から始まり、簡単な説明と、見本として歌うところを見たところで、説明は終わり、自分たちでやってみたいパートを選んで実践することになった。
一応ソプラノを担当していた身としては1stを選びたいなあ、と思ったところで、隣にいるキミの様子を見る。
じっと前を向いて微動だにしない彼女の様子に、ああ、これは困っているなあ、と思ったアグリは近くにいた先輩と思しき人物に声をかけてみた。
「すみません。パートについて教えていただけませんか?」
「はい、いいですよ」
説明を聞いたキミは、高音でないし、と2ndの集まりに混ざりにいった。
それを見届けたアグリも別の集団の近くで本題に入るのを待つことにした。
題材に選ばれた曲は知っている人の多そうな名曲で、アグリも中高両方の部活で歌ったことがあった。
むしろ歌ったことがある曲はどうにも歌いにくいと思っているので、少し困ってしまった。
そんなことは置いておいて、大体別れたようで、楽譜が配られると、練習が始まった。
楽譜読めなくてもできるらしい。アグリの知り合いは皆読めるのでそれにはさすがに驚いた。
しっかり練習して、一応合わせられるくらいにはなったということで、最後に全員で歌ってみることになった。
時間も短く、お世辞にも上手いとは言えないが、達成感はあったし、声だけで、というのも面白かった。
そういうわけで、初めから入ろうと思っていたとはいえ、解散する頃には気持ちはほぼ固まっていた。
「また今度ね」
キミに別れを告げ、駐輪場へ向かおうとすると、なんとそのままついてきた。
「……もしかして、自転車?」
そう訊ねてみると肯定の意を示された。
言われてみれば確かに自分の地元ならキミの地元でもある。
なんだかやけに恥ずかしくなって早歩きを始めたら、何もないところでつまづいてしまい、余計に恥ずかしくなってしまった。




