#39
「今回のイラストはいつもの方ではないのですね」
リハーサルを終え、出発するまでの休憩時間。
ふと、思い出したかのようにミドリが尋ねた。
「まあ、ちょっとね」
つい昨日投稿したばかりの動画は、アグリに声をかけてきた人物に頼むことにした。
普段は同じ作者のフリーイラストを使っているので、ミドリには真新しいのだろうか。
「くさもちちゃんは、次はいつ投稿するとかあるの?」
「来月以降になるかと思われます」
「そうなんだ。楽しみだな~。……ねえ、最近忙しそうだけど、どうしたの?」
ミドリは夏休み中の練習にはあまり参加していなかった。
流石に本番付近になればよく参加するようにはなったが、それでも毎日とは言えない。
「……わたくしにも色々あるんですよ」
少し考えこむような仕草をしたが、すぐに顔を上げ、いつものように振る舞った。
「無理はせんといてよ」
アグリは何かあると思ったが追及はしないことにした。
そろそろ時間だ。再度集まった五人の部員と顧問は音楽室を後にした。
――――
――
休日、友人と遊びに行ったアグリは、ミドリを含む理数科の生徒たちが歩いているのを目撃した。
思わず見つからないように行動してしまったが、向こうがこちらに気付く様子はなかった。
「何やってんのアグリ」
友人には呆れられたが、先日の騒動もあり、気まずいものは気まずい。
自分はミドリを除く三人とは確執があるのに、いつの間に仲良くなったのだろうか。
同じクラスということを除いても不思議に思える。
ミドリたちは遠出しているのにも関わらず、大きな荷物を背負っていた。一体何をしに行くのだろう。重くないのだろうか。
会話は聞こえないが、よく見ると見知った四人の他に、もう一人知らない人物が同行していることがわかった。
人混みに紛れそうだったため、追いかけようとしたところで、友人に止められた。
「ほら行くよ」
「……わかったよ」
アグリはしぶしぶ諦めて目的地へ向かうことにした。
すると、そんなことはすぐに忘れてしまった。
――――
――
「部員がいなくなった」
そう打ち明けたのはユカリ。
夏休みが終わって早々、事情を知る者を集めると、開口一番にこう告げた。
「何を急に」
「説明して」
一言ではわからない、と非難の声が上がる。
「美術部の富山さんが夏休み中から来てないんだ。連絡もとれない。」
「家族にも?」
「うん。家にかけても出ないし」
どうしようもない、と騒ぐユカリにミドリが言った。
「……確か、妹さんがおられますよね?」
「え、そうなの?」
「その方に連絡してみます」




