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#37

 先日のことを名前を伏せてミドリに相談してみた。


「あまりこちらとあちらを結びつけるのはよくありませんよ」


 そのとき、自分が何をしようとしたのかわからないが、手首を引かれ、軽くいなされたような気がする。


「……すみません」


 意識が暗転する直前、申し訳なさそうには見えないミドリの顔が映った。


 気づけば自室のベッドの上にいた。ピピピピ、とスマホのアラームが鳴り続けている。

 アラームを止め、時間を見る。土曜日だ。

 あれは夢だったのだろうか。そんなことを思い浮かべながら、リビングへ向かう。




 いつものように、最寄り駅からは先輩たちと一緒になるが、相方がいない。

 不思議に思っていると、部長が教えてくれた。


「くさもちちゃんなら、今日はお休みだって」


 聞いていない。そう言えば、あきれられた。


「けんかでもしたの?早めに仲直りしなよ」


 そんなことを言われたところで、心当たりはない。


「それより、昨日休んでたけど、もう大丈夫?」


 そんな記憶はないが、そもそも昨日ミドリと会って以降の記憶がない。

 どうやって帰宅したのかすらわからないのだ。


 不可解なことが多く、練習にも身が入らない。

 ただ、ずっと抱えていたもやがなくなった。ような気がする。

 昨日何があったのか、聞きたださなければならない、とアグリは思った。




 月曜の昼休み。友人と共に食堂へ向かう途中、中庭でミドリを見かけた。

 友人に断りを入れ、アグリはミドリを捕まえて話しかけた。


「何の用ですか」

「なんで休んだの」

「体調不良です」

「なんで連絡してくれなかったの」

「必要ありますか?……本日は出席します」


 これでいいだろう、と話を終わらせて去っていこうとする。

 そう言われると何も言えなくなるが、引き下がるわけにはいかない。


「じゃあ、金曜に何があったか教えて」


 もはや答えてもらおうとは思っていなかった。

 ただ、聞かせてやりたかったのだと思う。


 沈黙が続く。アグリにはこの時間がどうしようもなく長く感じた。


「当時、わたくしは君の相談を受けていました」


 そっと口を開いたかと思えば、その口から飛び出してきたのは更に不可解な話だった。


 ミドリに先日のことを相談していたアグリは、急にミドリに掴みかかろうとしたかと思えば、急におとなしくなったのだという。

 クラスメイト曰く、その辺りの時間に早退したそうなので、無意識に早退を告げたり、欠席の連絡を入れたりしていたのだろう。

 アグリはその状態に覚えがあった。


 シミラだ。


「私のシミラが?」

「そうかもしれません」

「じゃあ、えっと、なんとかして」

「……わたくしにはできかねます」


 ミドリにできないのであれば、自分でやるべきか。

 しかし、自分のシミラとはいえ、シミラと話せる者はミドリしかいない。

 ふと、時計を見ると昼休憩はあと半分しかなかった。まだ昼食を食べていない。

 仕方がないので、アグリとミドリは別れることになった。




 放課後、部活へ向かう途中で鉢合わせたので、二人は一緒に音楽室へと向かった。


「あ、仲直りしたの?」


 一緒に教室にやってきた二人を見た部長が尋ねる。


「いつけんかしたことになっていたのですか?」

「というわけでそもそもけんかはしてませんでした」

「早く言ってよ~。まあ、よかったわ」


 そういえば、否定していなかったな、と無言で見つめてくるミドリから目を逸らしながら思った。


 初めは少しギクシャクしていたが、合わせているうちに気にならなくなった。

 歌うときは表情豊かなんだよなあ、と思いながら見ていたら、休憩の時に怒られてしまった。




 帰宅途中、SNSを見ると、メッセージが届いていた。


『イラストを描かせてください』


 送り主は今回の件の原因でもあるミユキだと思われるアカウントだった。

 名前は雨雪みぞれ。アグリはとりあえず話を聞くことにした。

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