#33
「全員揃うのって久しぶりじゃない?」
土曜日の朝、全員が音楽室に着いたところを見計らってかのこが言った。
「そうですね」
なんだかんだ新曲を交えながら活動はしていたが、具体的な目標がない分、そこまで熱心にはできていなかった。
以前より提案はされていたが、これを機に顧問と相談して、春にしか行っていなかったランチタイムコンサートを他の季節にも行うことにした。
今は曲目も決まったので、その練習をしている。
部員の予定を管理し始めたこともあり、来週からは揃いやすくなりそうだ。
練習が終わり、校舎から出たあたりでミドリはあさひを見かけた。
あれからほとんど連絡を取っておらず、履歴は動画を投稿したことへの反応のみとなっている。
「あれ?」
その横でアグリは見覚えのある人影を見た。
「ねえ、くさもちちゃん。あの人って――」
それは先日出会った山本会の一人、八雲だった。
あさひと親しげに話しているが、同じ学校に通っているのだから、交友関係があるのはおかしなことではない。
だが、複数人のシキサイが付着した折り鶴を見たこともあり、イロドリが何もしてこないことに対する疑問が浮かんだ。
休み明けのある日、二人宛てにメッセージが届いた。
『次に消されるのは私かもしれません』
送り主は詩乃。失踪していない参加者の中では唯一の女性だ。
以前聞いた話では、人が消えるのは決まってこの曜日の放課後以降だという。
部活の有無にかかわらず、学校から帰らないらしい。
二人は放課後、部活が終わった後に彼女に会うことにした。
「どうして、次は自分だと思ったんですか?」
放課後、合流した三人で駅近くの喫茶店に入って話を聞くことになった。
「夢を見たんです」
うつむきながらシノが言った。
それは、大きな鳥に食べられる夢だったという。
頭から飲み込まれ、そこで目が覚めた彼女はこれが失踪の前兆だと感じたそうだ。
「彼らはどこへ消えたんでしょうね」
辛くなければいいが、とほほえむ彼女の顔は、シキサイを失ったように気力を失っているように見えた。
喫茶店を後にし、少し離れたところにある公園で待ってみることにした。
時間も時間なので、人っ子一人いない。
アグリはブランコやすべり台のような遊具で遊びながら、ミドリはシノの隣に座り、曲を作りながら、何かが起こるのを待った。
しばらく待ったが、何も起こらないので帰ることにした。そのとき。
バサバサという鳥の羽ばたくような音と共に、ザクザクと砂を踏む足音が聞こえてきた。