#32
詳細を聞いた数日後、他のまだ失踪していない当事者との面会がかなった。
ホームルームの関係でF組の少し遅くなってしまったが、放課後、アグリとミドリは約束の場所へ向かった。
前回と同じく食堂に行くと、前回出会った三人の他に、見知らぬ人物が二人いた。
「すみません、遅くなりました」
「いいよ、いいよ。ナオ君から聞いてたから」
どうやらナオが伝えてくれていたらしく、ほっと胸を撫でおろす。
「それで、その人たちが?」
「いなくなった奴らを除けば、これで全員だな」
アグリは虫眼鏡――はまっているのはレンズですらないただのガラスだが――を通して彼らを見た。
そんなことをせずとも、見ようと思えば見えるはずだが、ことあるごとに調整するのはたやすいことではないため、こうしているのだろう。
ミドリも自前の眼鏡を外せば見えるようにしているが、正直視力の問題で不便だと思っている。
「特におかしなところはなさそうですけど……」
「……ねえ、くさもちちゃん。やっぱりこれ、私たちの仕事じゃないんじゃ……」
アグリはミドリに耳打ちするが、そのミドリは何の反応も示さない。
「くさもちちゃん?……ミドリちゃん!」
「……声が、聞こえる」
「え?」
そう呟くと、ミドリは食堂から飛び出していった。
アグリは集まった当事者たちにひとこと言うと、ミドリを追いかけ始めた。
幸い、アグリの方が足が速いため、すぐに追いつくことができたが、ミドリの狙いを知るために、そのまま泳がせることにした。
アグリがミドリを追っていくと、学校裏にある裏道に着いた。木々が生い茂り、なんだか薄暗い。
その途中でミドリはしゃがみこむと、なにやらごそごそと漁り始めた。
「祠?」
近づいてみると、そこには小さな祠があった。
扉を開け、中から取り出したのは折り紙でできた鶴だった。
見た目はただの赤色の鶴だが、よく見ると様々なシキサイが混ざったような淀んだ色をしている。
「もしかして、あの……」
先日見せてもらった写真に写っていた折り鶴と同じ色だ。
もし、これが写真の鶴と同じものであるのなら、一体誰がこんなところに置いたのだろうか。
「聞いてみましょう」
そう言うと、ミドリは折り鶴を祠に戻し、食堂へ戻っていった。
食堂にはまだ人が残っていた。
「あの鶴ってどうしましたか?」
「え?捨てた……はず……よな?」
急にそんなことを聞くので自分の記憶に不安を感じている。
他の人たちもお互い顔を見合わせている。
「一輝が片付けとくって言ってたような」
「じゃあ捨てたわ」
カズキは彼らのリーダー的存在で、オリガミ様も彼の提案で行ったのだという。
「やっぱり俺のせいだよな。俺が――」
「ストップストップ」
「――で、解決法はわかったんすか?」
責任を感じて自分を責めるカズキをなだめながら、十夜が二人に尋ねる。
その冷ややかな目線に、アグリは恐怖を感じた。
「まだわかっていません」
「……やっぱり、オカルトなんてどうしようも――」
「いえ、これはわたくしたちの領分ですよ。アグリさん」
そう言うミドリがにやりと笑った気がした。




