#14
休み明けのその日、ミドリが作業の休憩にスマホを見ると、通知が入っていた。
『はじめまして。あさひです。K先輩に紹介されたのですが、合っていますか?』
通知はダイレクトメッセージだった。"くずもち"が言っていた人物だろうか。
おそらくイニシャルでぼかされてはいるが、ミドリは彼のことを指しているのだと思った。
始業式に伝えたのだろうか。ミドリは、放課後、教室棟と特別教室棟を繋ぐ通路にいる"くずもち"を見たことを思い出した。
『はじめまして。ささみです。間違いでなければ、紙を渡されたと思いますので、写真を送っていただけますか?』
返信を待つ間に、メッセージを送ってきた本人のアカウントに飛んでみると、いくつか動画が上がっていたため、ミドリはこれを聴くことにした。
自分は作らないジャンルだが、相手はそのあたりどう思っているのだろうか。
『これですか?』
『はい。間違いありません』
送られてきた写真に写っていたのは確かに"くずもち"に渡した紙だった。
伝えたのは動画共有サイトのアドレスだったが、このアカウントもすぐに見つけられるものだ。
『ささみさんとK先輩ってどういう関係なんですか?』
『同じ部活に所属しています。あさひさんとはどのような関係ですか?』
『色々あって曲を聴いてもらうようになったんですよ』
"くずもち"は掛け持ちをしているので同じ部活と言ってもどの部に所属しているのかはわからない。
"あさひ"も詳細を語らなかったが、そこまで追及するほど相手に興味を持っていなかった。
『曲、一応聴きました。あんまり聴かないジャンルですね』
『私もいくつか聴かせていただきました。ご自身でも歌われるのですね』
『それはささみさんもでしょう。あの絵師さんもN高生なんですか?』
『主コメに書いてある通りです』
そうしてしばらくやり取りを続けていたが、少しずつ返信までの時間が開き、緩やかなやり取りになっていった。
――――
――
「青山さん」
「どうしたの?三枝ちゃん」
「脚本を柊木にまかせてもらえませんか?」
「え!?」
文化祭の出し物を決めたその日、ホームルームが終わった後、ミドリは中央委員の青山葵に提案をした。
それを聞いていたユカリは大層驚き、否定しようとした。
「やりたかったんでしょう?」
「あ、いや……」
「わたくしも一緒にやるよ」
「えっと、それは……」
話した覚えはないのに、ミドリはユカリが脚本に興味があることを知っているようだった。
自分の本心を見透かすようなその瞳に、ユカリは恐怖すら感じた。
「青山さん、音響を担当することって可能ですか?」
「いいけど、一応みんなに聞いてみないことには決められないかな」
「……そうですよね。では、それでお願いします」
「そういえば、二人のクラスは文化祭何やるの?」
部活の休憩時間に"かのこ"が尋ねた。
「A組は劇です。……内容はまだ決まっていませんが」
「なるほど、劇ですか。F組はホラー映画を作る予定なんですよ」
「そうなんだ、私のクラスも劇だけど、かりんとうのところはなんだろう」
「確か映画ですね」
「よく知ってるね」
「隣のクラスですからね」
ミドリのいる一年F組と"かりんとう"と"くずもち"のいる二年A組は隣り合っており、そういう話はすぐに伝わってくる。
映画という選択肢が出たのにはそういう理由があった。
「……くさもちのクラスがやる映画ってテーマは決まってるのか?」
話をしていると、"くずもち"が乱入してきた。
「ああ、七不思議です。せっかく学校にいるなら、って皆さん言ってましたね」
「七不思議……」
ミドリが答えると、"くずもち"は考え込むような仕草をした。
「この学校に七不思議ってあるんですか?」
「……いや?聞いたことはないな」
アグリが"くずもち"に尋ねると、何か言おうとして知らないと答えた。
ミドリはその様子に疑念を抱いたが、深く考えないことにした。
まもなく、練習が始まったので、その話はこれで終わった。
「あ、山本?ちょっとお願いしたいことがあって……」
部員と別れた後、"くずもち"は誰かと電話をしていた。
それは、彼らが持つ、部外者には決して知られてはならない、ある秘密と深く関わっていた。




