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その日空に架かった七色の橋は、不思議なことに、それを見た全員に、それが"透明な虹"であると認識された。
ある者は満たされない愛を――
ある者は捨てられない夢を――
ある者は聞きたくない音を――
ある者は見えていない光を――
ある者は解き放てない体を――
ある者は踏み出せない足を――
ある者は差し出せない手を――
ある者は解き放たない心を――
ある者は攻められない矛を――
ある者は受けられない盾を――
――抱えながら、その色を瞳に映していた。
その、透明な虹の真下に、上空を恨めし気ににらみつける一人の少女がいた。
その左手に握りしめられたスマホには、何もない空が映った写真と共に、「始まった」とだけ送られた画面が映し出されていた。