第93話「街とバトン」
コツン、と。音が鳴った。
エルザ「…え?」
そして、次の瞬間。
その音は、まるで雨のように、次々に地面に降り注ぎ始める。
エルザが顔を上げると、そこでは、ライムライトが光と共にヘルタースケルター目掛けて降り注いでいた。
ヘルタースケルター『ッいやぁああああああ!!!!!!』
思わずツタを全て引っ込め、翼を広げて逃げようとするヘルタースケルター。
だが、そんなヘルタースケルターの頭上からは、お構い無しにライムライトが降り注ぐ。
ヘルタースケルター『なにッ?!何よ!!!何なのよ!!!!』
貯蔵塔の方へと地面を走りながら逃げ惑うヘルタースケルター。
子供1「エルザ様をいじめるなーー!!」
街の人1「俺たちのレディ・ブランに手出しはさせねぇぞ!!!」
街の人2「私たちの街は、私たちで守るのよ!!!」
満身創痍のエルザ達が、地面に横たわりながら振り返ると、そこには、ライムライトを抱えた街の人達が集まっていた。
手に手にライムライトを持ち、ヘルタースケルター目掛けて投げつけている。
ふと見ると、そこにはローランやダンテ達の姿もあった。
アドリエンヌに肩を貸して立たせるヴィヴィアン。
暮雨の方に走りよっていく小雨丸。
ダンテと共にライムライトを投げ続けるマウリツィオ。
ライムライトを積んだトラックの荷台に立ち、リレーの最前列を担うリトル・トラジティ。
ゾエとマルグリットを引き連れてエルザの元へと走りよってくるローラン。
そして、その後ろからドロテアも走ってきているのが見える。
黒の街に、太陽の色の雨が降っていた。
ドロテア「っエルザ…!」
エルザ「あぁ…、みっともないとこ見せちまったね…」
ローラン「エルザ様!!」
エルザ「ローラン…。でかしたよ」
マルグリット「エルザ様!あれ!!」
マルグリットが、前方を指差す。
そこには、6枚あった羽のうち、2枚を無くし、残った羽もボロボロになったヘルタースケルターが、飛び立とうとする姿があった。
ヘルタースケルター『いやッ!!いやぁ!!!やめてよ!!』
エルザは、思わず追いかけようと身を起こそうとするが、虫が這う程度の動きでノロノロと身体が動く有様だった。
ヘルタースケルターはよろよろと飛び立っていく。
ゾエ「マルグリット、早く手当ての用意を!」
マルグリット「分かった!」
ドロテア「私も手伝うわ!」
ローラン「エルザ様、ヘルタースケルターは私が追います!」
エルザ「…すまないね。ローラン、深追いするんじゃないよ。居場所を突き止めたら、通信用魔具で知らせるに留めな」
ローラン「御意」
エルザが、ローランに借りていたデュランダルを返す。
バトンを渡すように、互いが互いをしかと見据える。
エルザ「…」
ローラン「…」
しばし無言の時間が続くと、ふいに、ローランはヘルタースケルターを追って飛んで行った。




