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第87話「希望」

時を同じくして、中央エリアを駆け回り、民家を訪ねて回る人影があった。

リトル・トラジティである。

彼女は、ローランから、エルザがライムライトを必要としている事を通信で伝えられ、1人、シュヴァリエ邸を飛び出し、黒の街を奔走(ほんそう)していた。


固く閉ざされた民家の戸を叩き、リトが大声で呼びかける。



リト「頼む!!ライムライトが必要なんだ!!!今、街を守るために必死に戦ってるエルザが必要としてるんだ!!!お願い!!!お願いだから!!!」



戸が、(わず)かに開かれる。



住人「…お前、スマイルのところの奴じゃないか!何しに来たんだよ!!騙されないぞ…!!」


リト「違う!!騙そうとなんてしてない!!本当にエルザが必要としてて…!」


住人「うるせぇ!今まで散々、お前んとこのギルドは俺たちを騙してきただろうが!!それにお前らのせいで、うちの娘は怪我したんだぞ!!あのパレードでの騒ぎに巻き込まれてな!!誰がお前なんかの言うこと聞くかよ!!お前なんか死んじまえ!!」


リト「死ねって言うなら死ぬよ!!本当に許されないことをしたと思う!!!何でもする!!(つぐな)うよ!!!だから、お願い!!!エルザを助けて!!!お願いします!!!!」



扉が音を立てて閉まる。


扉に飛びつき、懸命に呼びかけるリトの両手に巻かれた包帯からは、血が滲んでいた。



リト「あたしは確かに犯罪者で、どうしようもないクズだけど!!でも、この街が大好き!!!この街を愛してる事だけは本当なの!!!これだけは、嘘ついたことない!!!このままじゃ、黒の街が無くなっちゃう!!!だから、だから!!みんな、この街が好きでしょ?!お願い!!!エルザのために!!この街のために、力を貸して!!!黒の街はここにしかないんだ!!!」



戸が、ゆっくりと、少しだけ開かれる。

住人が、覗いていた。



リト「お願い……!お願いします……!」



ふいに、扉が大きく開かれる。

住人の奥に立つ彼の妻が、扉を大きく押し開けていた。


恰幅のいい妻の方が口を開く。



住人の妻「こんな小さな子にここまで言わせて、まだ騙されたことがどうだの言い続けるのかい?」


住人「……」


住人の妻「しっかりしな!騙されようが怪我させられようが関係ないよ!普段エルザ様にあんだけ世話になってんだから、恩を返すんだよ!!恩返ししようとして騙されたんなら本望じゃないのさ!!」


住人「…わかったよ。ライムライトが必要なんだな!どれぐらい必要なんだ!」


リト「…あるだけ!」


住人の妻「ほら!ぐずぐずしてないで、ご近所さんにも言って回るよ!!」


リト「あぁ…!ありがとう…!」



黒の街に希望が灯ろうとしている。

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