第82話「ヘルタースケルターの正体」
先頭、機関室。
バイクを乗り捨てたエルザは、ヘルタースケルター目掛けて、頭上からジャンヌ・ダルクの一撃を見舞った。
エルザ「ッハァ!!!!」
ヘルタースケルター「あら」
ヘルタースケルターは、傘で受け止める。
ヘルタースケルター「やるじゃない!あと1回よ」
エルザ「下手な運転だね!こいつを止めな!!」
ヘルタースケルター「いいわよ。そろそろだもの」
エルザ「なに?」
ヘルタースケルターが、機関室から大きく飛びすさり、汽車の進路上、線路の上に立つ。
汽車のライトに照らされたヘルタースケルターは、傘を開いて眼前に構えた。
エルザが目を見開く。
エルザ「掴まりなぁああ!!!!」
次の瞬間、汽車は派手にクラッシュした。
空中に身を躍らせながらエルザが叫ぶ。
エルザ「シュヴァルブラン!!!」
乗り捨てられたあと、自動で汽車と併走していたシュヴァルブランが走ってくると、エルザはシュヴァルブランのシートに着地した。
勢いを殺すように、何度もスピンし、徐々に止まるシュヴァルブラン。
エルザ「アドリエンヌ!!!無事かい!!!」
通信が入る。
アドリエンヌ『自分の心配したら?』
それだけ言って通信が切られる。
エルザ「…ま、報酬を受け取る前にくたばったりはしないか」
エルザが、前に向き直った。
エルザ「さて、やってくれたね。あの列車にはお前のお友達とやらも大勢乗ってたろうに」
ヘルタースケルターが、傘を畳みながら言う。
ヘルタースケルター「貴女が止めろって言ったんじゃない。何か新しい遊びがしたいんでしょ?鬼ごっこは嫌そうだったもの」
エルザ「お前そのものが嫌いなんだよ!!」
ヘルタースケルターが、畳んだ傘をだらりと下げる。
ヘルタースケルター「…どうしてそんなヒドいこと言うの?悲しい」
エルザ「哀れな奴だね。いっそ、何も分からないまま死にな」
エルザが、シュヴァルブランを走らせ、ヘルタースケルター目掛けて突っ込む。
ヘルタースケルターは、横に跳ぶと、壁を破壊した。
ヘルタースケルター「せっかく仲良くなれると思ったのに。せっかく貴女は素敵なのに。お友達に、もしかしたら家族になれると思ったのに。…大っ嫌いよ」
壁の大穴の向こうの景色は、温室だった。
エルザ「温室?!何する気だい!!」
ヘルタースケルターが、空へと舞い上がる。
エルザもバイクで後を追うが、外壁の上に登るのが精一杯で、ヘルタースケルターには追いつけない。
ヘルタースケルター「もういいわ。お友達はいっぱい居るもの。寂しくなんてない。ねぇ?みんな」
エルザ「やめな!!」
ヘルタースケルターは、温室の建物の真上まで飛ぶと、身体から大量のツタのような物を伸ばし始めた。
ヘルタースケルターから伸びたツタは、温室の壁や入り口を破壊し、建物の内部へと蔓延っていく。
エルザ「マズい!!」
ヘルタースケルターは、温室の中のドライフラワー患者たちにツタを打ち込み、まるで養分を吸いあげるように、血液を奪っていた。
次第に、ヘルタースケルターの背中から、巨大な蕾が覗き始める。
ヘルタースケルター「もういいわ。お友達になれないなら要らない」
ヘルタースケルターの正体、それは、強大な力を持った知性あるドライフラワー患者だった。




