第78話「鬼ごっこ」
エルザが本殿に踏み込んだ。
本殿には、御神体が祀られている社殿と、八咫烏の像が安置されているが、その八咫烏の像の台座に腰掛け、日傘を差す影と、その足元に蹲る影があった。
ヘルタースケルターとフィガロである。
エルザ「ここは、お前みたいなのが立ち入っていい場所じゃないし、血で汚すなんて以ての外だ。とっとと立ち去りな」
ヘルタースケルター「あら、ごめんなさいね。でも私、悪くないわよ?この子がこんな所に逃げ込むから」
ヘルタースケルターが、顎で自身が差している傘の上を示す。
そこには、ジョナサンの変わり果てた姿があった。
エルザ「何を勘違いしてんだい。出てくのは、この街から。私たちの黒の街からだよ」
エルザがゆっくりとジャンヌ・ダルクを抜き放った。
フィガロ「同志…。下がっていて下さい。ここは、私が」
ヘルタースケルター「ダメよ。貴方は私の大事なお友達だもの。無理しないで休んでて」
ヘルタースケルターが傘をひと振りする。
ジョナサンの遺体は、本殿の白砂利の上に力なく飛んで行った。
ヘルタースケルターが優雅に立ち上がる。
ヘルタースケルター「ねぇ。エルザ。貴方も、お友達になりましょう?なってくれるわよね?」
エルザ「出てけってんだよ」
エルザとヘルタースケルターが構える。
ヘルタースケルター「ざ〜んねん。じゃあ、お互いもっと好きになれるように、遊びましょう?」
エルザ「…」
ヘルタースケルター「でも、戦いごっこはさっきやってもう飽きちゃった。だから…」
ヘルタースケルターがふわりと夜空に浮かぶ。
ヘルタースケルター「まずは鬼ごっこにしましょうか」
フィガロ「同志!!」
ヘルタースケルターが、黒の街の外壁に向かって飛んでいく。
ヘルタースケルター「素敵な騎士様!さぁ、私をつかまえて?」
エルザ「ふざけんじゃないよ」
そこへ、エンジン音を轟かせながら、シュヴァルブランに跨った小雨丸が現れる。
小雨丸「エルザ殿!!」
エルザ「ナイスタイミングだよ。そのまま乗ってな!」
小雨丸からハンドルを半ば奪うようにしてバイクに跨るエルザ。
エルザ「飛ばすから掴まりな!」
小雨丸が、エルザの腰にしがみつく。
フィガロ「待ちなさい…!」
フィガロの静止を聞かず、小雨丸とエルザを乗せたバイクはフルスロットルで八咫烏神社を飛び出していく。
フィガロは、その後を、よたよたと追い始めた。




