第76話「ジェラルド」
マルコシアスも、無傷ではなかった。
膝をついて肩を押さえるマルコシアス。
マウリツィオ「パパ!!」
ダンテ「親父!!!」
マルコシアス「来るな!!!かすり傷だ!!」
ゾエがマルコシアスの傍らに駆け寄り、エルザはスマイルの方へ近づいていく。
スマイルは、浅くはない傷を負いながらも、取り落とした武器を拾おうと劇場の床を這っていた。
スマイル「ぐっ…!うぅ…!!」
スマイルの手がジル・ド・レェに届く前に、エルザが足でジル・ド・レェを蹴り飛ばした。
エルザ「哀れな奴だね。本当に」
スマイル「ハハッ…。何とでも言えよ…」
スマイルが素手で構え、エルザに殴り掛かる。
エルザはそれを受け流し、スマイルは再び床に倒れた。
スマイル「うぐっ……、ぉ……!」
エルザ「他に方法があったはずだよ。もう遅いけどね」
スマイル「…そうさ。もう遅い。……それに…他の方法なんか、あるもんかよ、そんなの……」
エルザ「……」
スマイル「頼れば騙され、足掻けば足を掬われ、助けを求めれば付け込まれる…。皆がみんな、お前みたいに恵まれた環境で生きてないんだよ…」
エルザ「そうか」
立とうとするが、上手く身を起こせないスマイル。
エルザが、ジャンヌ・ダルクを構えた。
エルザ「…楽にしてやるよ」
スマイル「……ハハッ」
エルザがジャンヌ・ダルクを、項垂れたスマイルの首筋に向かって振り下ろす。
しかし、その刹那、一つの影が割って入った。
ジャンヌ・ダルクの一撃は、その影に遮られる。
エルザ「っ?!」
スマイル「…なっ」
ジェラルド「ウゥ…」
割って入ったのはジェラルドだった。
スマイル「っ!!?うわぁぁあああああああ!!!!」
傷を負って蹲るジェラルドに縋り付くようにして這い寄るスマイル。
スマイル「ジェラルド!!ジェラルドォ!!なんで…!どうして!!」
ジェラルド「二イチャ……」
スマイル「酷い傷だ…あぁあ…、どうすれば…!ジェラルド、しっかりしてくれジェラルド…!!」
ジェラルドからは、血が流れ続けている。
スマイル「頼む!!頼むエルザ!!ジェラルドを助けてくれ…!何でもするから!!」
エルザ「…っ」
スマイル「エルザ…!!このままじゃ!!!このままじゃ弟が!!!」
エルザ「…もう……」
息も絶え絶えになりながら、スマイルに手を伸ばすジェラルド。
ジェラルド「…ゴメン…ネ……、ニイチャン…」
スマイルに手を握られながら、ジェラルドが息を引き取る。
スマイル「ジェラ…ルド?」
返事はなかった。
スマイル「嫌だ…!!っ嫌だあああああ!!!!!!ジェラルドオオオ!!うあぁぁああぁああああああああああああぁぁぁあ!!!!!!」
哀れな道化は舞台から降りることとなった。




