表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/105

第54話「ある男、アビー・マーガレット」

俺はいつも同じ夢を見る。



ジェラルド「ねぇ。何でそんな恐い顔してるの?」


スマイル「ん?そんな顔する訳無いじゃないか。ボクはスマイル、みんなのピエロだよ?心で泣いて顔で笑うのさ」



夢か現実か。よく分からないやつをだ。



ジェラルド「ねえ。いつ元に戻してくれるの?」


スマイル「すぐにだ。もうすぐだよ」



でも、分かってる。

ジェラルドは、弟はこんな風に俺に話しかけてこない。



ジェラルド「嘘つき」


スマイル「嘘じゃないさ」



俺は。

ボクはスマイルだ。


ジェラルドが見たかったピエロ。


あいつが夢にまで見たピエロのスマイルだ。



ジェラルド「いつまでそうやって逃げるのさ。本当は分かってるんだろ?」


スマイル「ハハッ。ご機嫌斜めかな?」



あいつが、こんな辛そうに喋るわけない。

こんな苦しそうな表情を浮かべるハズが無い。



ジェラルド「分かってるんだろ?お前に僕は救えない。ピエロなんかに出来ることは何もない。僕に必要なのはエルザ。白薔薇の団のエルザ・シュヴァリエだ」


スマイル「すまないね。ジェラルド。待たせ過ぎたようだ。すぐに戻してあげよう。すぐにだ。エルザなんて必要ない。ボクは、それだけの力を手に入れた。あの頃の、無力な子供は…、アビー・マーガレットはもう居ない」



でなければ、ボクは。

俺は。ボクは。俺は。



ジェラルド「嘘つき。スマイルなんて、ピエロなんてどこにもいないじゃないか。兄さんの嘘つき」


アビー「ジェラルド。待ってくれ。待っててくれ」



廃ビルの一室で目を覚ますスマイル。

汗で、メイクが落ちている。


メイク道具を手に、洗面所へと向かうスマイル。


鏡に写っていたのは、この世の全てを怨む男の顔だった。



アビー「エルザ・シュヴァリエ、か。クク…。俺は、どこかであいつを恐れていたのかもしれないな。逃げていたのかもしれない」



蛇口を捻り、水を出すスマイル。

冷たい水を顔にぶつけ、薬剤を手に広げる。


一旦、斑になったメイクを完全に落とす。



アビー「ふぅ…。得体の知れない物は怖い。どうしたって、俺にあいつは理解できない。あいつとは、何もかもが違う。あいつが光だとしたら、俺は闇ですらないただの影だ。ちっぽけでしみったれた、光を追いかけ続ける影」



スマイルが、丁寧に顔に下地を作っていく。



アビー「どうしたって、あいつには勝てない。少なくとも、俺では」



スマイルが、顔に白粉(おしろい)をはたいていく。



アビー「少なくとも、正面切っては勝てない。…勝てない」



スマイルが、顔にピエロのメイクを描いていく。



アビー「クク…。勝つ必要はない。あいつは勝手に負けるんだ。影じゃなく、闇に呑まれて」



スマイルが、最後に、口紅を大きく笑顔の形に引いた。



スマイル「そうだろ?最後に笑うのはボクさ。ハハッ」



スマイルは、ビルの地下へと降りていった。


光の届かない場所へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ