第2話「会合」
エルザ「さて、薬物の件については、ファーザー・マルコシスとヘルタースケルターの両名で、後ほど話し合って貰いたい」
マルコシアス「あぁ…そうさせてもらうとも。じっくりとな…。お時間を頂き感謝するよ」
スマイル「不幸な誤解も解けたことだし、議題に入ろうよ。何だったかな?」
エルザ「スマイル。事前に伝えておいただろ?確認しておいて欲しいね。第一の議題は、ライムライトの輸送に関してだ」
スマイル「ハハッ。すまないすまない。で?」
エルザ「ここのところ、我ら白薔薇の団の人員が担当するライムライト輸送隊が、襲撃を受けている。何か、心当たりや情報がある者は?」
マルコシアス「穏やかじゃないな。とりあえず、うちじゃないことは確かだ。俺と、ファミリーの名に誓う」
スマイル「誓う価値があるほどの名なのかなー?」
暮雨「慎まれよ。スマイル殿」
スマイル「ちょっとしたジョークだよ。暗かったからね。ハハッ」
エルザ「暮雨殿。貴方が率いる鴉ならば、何か情報を掴んでいるのでは?」
暮雨「うむ…。エルザ殿も調査を進めておられようが、白薔薇の団と我々とで、得た情報にそう差はないだろう。対した情報は、我々からは供出出来ぬ。非力を詫びる」
エルザ「いや、それが聞けただけで充分だ。礼を言う。しかし、鴉でも我々が得ている情報以上の情報を掴めていないとなると…」
スマイル「ハハッ。まあ、5大組織か、それに準ずる規模の組織が犯人だろうね。やっぱりマルコシアス君のところなんじゃない?君のとこ、最近資金繰りが苦しいんだろ?」
マルコシアス「誰かさんが相談もなく卸値を変えてくれたからな。お陰で、白薔薇の団を襲うほどの準備が出来るような余裕は、生憎なくてね」
エルザ「ヘルタースケルター。あんたはどうなんだい?」
ヘルタースケルター「…フフフ。さぁ」
エルザ「率直に言うと、あんたが一番怪しいんだけどね」
ヘルタースケルター「知らないわ。ウフフフ…」
暮雨「知らぬ存ぜぬが通らないことなど、お分かりであろう。このままだと、ヘルタースケルター殿に、疑いの矛先が向くことになるゆえ、否定であれ、弁明であれ、なさった方がよろしいぞ」
ヘルタースケルター「別に、否定も弁明も必要ないわ。疑うなら疑えばいいじゃない」
エルザ「じゃあ、そうさせてもらおう。言っておくが、監視させてもらうよ」
ヘルタースケルター「ご自由に…。ウフフ…」
スマイル「じゃ、方針は決まったね。後は、実際にどうするかだ」
マルコシアス「ああ…。どうするエルザ。なんだったら俺のとこの生え抜きを貸すぜ?」
エルザ「お気遣い結構。そう簡単に借りは返させないよマルコシアス」
マルコシアス「ははは。見くびってもらっちゃ困るな。この程度で返せる借りだなんてさらさら思っちゃいない。単なる善意さ。ま、借りを返させてくれるってんなら大歓迎だがね」
スマイル「すまない。話に割り込むけど、本当に誰に襲われたんだい?エルザ君が手こずるなんて。ドライフラワー患者じゃないんだろ?」
エルザ「……。報告だと、黒ずくめの連中だったらしいね。ローブにフードで全身を隠していて、見たことのない魔具を使っていたらしい」
マルコシアス「他の自治区の連中かも知れねえな。27地区が最近どうもきな臭い動きをしている」
暮雨「あそこは、国境の防衛を担っているゆえ、あまり迂闊な推測はたてられぬな。下手な噂があちらの耳に入れば、刺激するやもしれぬ」
スマイル「しばらく、輸送そのものをお休みしたらどうだい?ボクのところの在庫を放出するよ。もちろん特別価格でね」
エルザ「商魂たくましいねスマイル。あんたは儲けられて、私のところは信用がガタ落ち。一石二鳥って訳だ」
スマイル「おっとっと。うっかりしてたかな?ハハッ」
暮雨「エルザ殿。しばらく、我々に輸送ルートの露払いをさせて頂きたい。厚かましいことは重々承知のうえだが、我々に、名誉と信用の回復の機会をくれはしまいか。このままでは面目が立たぬゆえ」
エルザ「何言ってるんだい。こっちからお願いしたいくらいさ。頼めるかい?」
暮雨「この首にかけて」
マルコシアス「おいおい、美味しいとこ持ってかれちまったな」
その後も、しばらくお互いの情報のやり取りを続ける5人。
黒の街の夜は深まっていく。