第27話「清めの塩」
一夜明け、シュヴァリエ邸。
エルザ「ほう?これはこれは。すまないねぇ。お口に合う紅茶が用意できるかどうか…」
スマイル「いやはや、僕も嫌われたものだね。お構いなく。エルザ君」
シュヴァリエ邸の正面階段の下では、剣呑な空気を放つエルザと、そんなエルザの事などどこ吹く風のスマイルが対峙していた。
エルザ「今日は何の用だい?うちの団員じゃ飽きたらなくなって、とうとう私をやりに来たかい?」
スマイル「ハハッ。相変わらずユーモアのセンスがピカイチだ。そんな君にとっておきの朗報。更にユーモアのセンスを磨くチャンスだよ」
スマイルが懐に手を入れる。
ローラン「エルザ様!!」
微動だにしないエルザの前に、ローランが飛び出す。
スマイル「ハハッ!そんな怖い顔しないでよ。ほーら、これあげるからさ。あ、飴ちゃんもいる?」
スマイルが取り出したのはビラだった。
ローランを手で制してツカツカと前に出たエルザは、スマイルの手からビラを引ったくるように受け取ると、読み始める。
エルザ「……。パレード?」
スマイル「そうさ。ここのところ街全体が暗いからパーッとね!ほら、物騒な事件続きだったろ?」
エルザ「へぇ…?誰のせいだと思ってるんだい」
スマイル「そりゃ、治安を守らなきゃいけない君がお仕事サボってたからじゃないの?」
ローラン「貴様…!よくもぬけぬけと!!」
エルザ「止しな。ローラン」
ローランを手で制するエルザ。
エルザ「言ってくれるじゃないか。返す言葉もないよ。どうにも、ネズミの駆除に手を焼いててねぇ…。いるんだよ。一匹、丸々と肥え太ってて小賢しいのが」
スマイル「へぇ?嫌な話だね。引っ越しを考えた方が良いかな?」
エルザ「あぁ。街から出ていってくれるってんなら話は早いね。是非とも頼むよ。どこぞの下水なんてお似合いなんじゃないかい?」
スマイル「ハハッ。生憎、こう見えても綺麗好きでね。そんな所に住むなんて想像すら出来ないよ」
エルザ「そうかい。なら良いんだけどね」
エルザがビラをローランに渡す。
スマイル「ま、そういう事だから。用はそれだけだよ。是非、観に来てくれると嬉しいな」
エルザ「あぁ…。楽しみにさせてもらおうじゃないか。忘れられない夜とやらになりそうだ」
スマイル「ハハッ…。もちろんだとも」
エルザ「ヴィヴィアン、お帰りだよ」
スマイル「あぁ。見送りなら結構」
エルザ「ふん。生憎、こう見えても私の部下は綺麗好きでね。下水まで見送るなんて想像すら出来ないさ。」
ニヤリと片頬を上げたスマイルはそのまま踵を返し、シュヴァリエ邸を後にする。
エルザ「マルグリット!ゾエ!塩撒いときな!!塩!!」
マルグリット「塩ですか…?」
エルザ「暮雨が言ってたんだよ。邪悪な奴に住まいを汚されたら塩で清めるんだと!撒いときな!!」
マルグリット「で、でも!塩は貴重ですし…」
エルザ「じゃあ、火薬でも撒いときな!!」
エルザが力任せにドアを閉めた。




