第25話「血判」
八咫烏神社の境内。
今、そこには、5大組織の内3つの組織の長と、その腹心が集っていた。
暮雨「よくぞ参られた。大したもてなしは出来ぬが、勘弁めされよ」
エルザ「いや、こっちが急に押しかけたんだ。会合の席を設けてくれて感謝するよ」
マルコシアス「あぁ、俺もオマケみたいなもんだ。お気になさんな」
暮雨「心遣い、痛み入る。さて、早速でしのびないが、こちらへ」
エルザ「ああ」
暮雨に案内され、拝殿の中へ入るエルザ達。
暮雨「小雨丸。茶を」
小雨丸「はっ」
畳の上に、盆に乗って出されるお茶。
エルザ「悪いね」
暮雨「いや」
マルコシアス「おっと。悪いが、俺は正座ってやつが苦手でね。足、崩させてもらうぜ」
暮雨「随意に寛がれよ。…して、エルザ殿」
エルザ「あぁ…。察しがついてると思うが、こないだの温室襲撃絡みの話だ」
暮雨「……」
エルザ「結論からいうと、あれは十中八九スマイルの仕業だよ。場合によってはヘルタースケルターも絡んでるかもしれない」
暮雨「ああ。鴉でも、温室にスマイルが出入りする場を掴んでいる。茨の物が消される場もな」
エルザ「…やっぱりかい」
暮雨「そうだ。だが、何をしようとしているのか、事前に奴を抑えるための決定的な証拠がない。…しかし」
エルザ「何か良からぬことを企んでるのは間違いないね」
マルコシアス「俺んとこのシマでも、ドラッグをばら撒いてる。まぁ、それ自体は前からだが、最近どうも出回ってる量が目に見えて増えてるようでな」
エルザ「資金が必要になった…か」
マルコシアス「俺が目を瞑ってられないほどの量を流してる。相当、切羽詰まってるのは間違いない」
暮雨「加えて、僕の手下や、白薔薇の団の団員に対し狼藉を働く始末。もはや機を待つべきは過ぎたと見るべきではなかろうか」
エルザ「ふん…。次の会合で問い詰めて様子を見ようかと思っていたが…。考えが甘かったかもね」
マルコシアス「悠長に構えてたって訳じゃないんだ。仕方ないだろうな」
暮雨「この一件、鴉が調べを進めようと思っている。任せては貰えないだろうか」
エルザ「それが本題…か。何か考えはあるんだろうね」
暮雨「スマイルは、どうやら地下に拠点を構え、怪しげな動きをしている。そして、奴の活動範囲は黒の街の全域に及んでいるようでな。鴉の独断では動けない」
マルコシアス「ちっ…。足下を這いずり回ってやがったのか。お似合いだが虫酸が走る。もちろん、うちのシマを調べてもらって構わない。なんなら、全面的に協力するぜ」
エルザ「あぁ、白薔薇の団も手を貸すよ。一般人に危害が及ばないよう、配慮はしてもらうけどね」
暮雨「では…」
エルザ「白薔薇の団団長、シュヴァリエ家当主、エルザ・シュヴァリエの名において、正式に、鴉に調査協力を申し込むよ」
マルコシアス「右に同じだ。マルコシアスファミリー頭目、ファーザー・マルコシアスの名で、鴉に調査協力を依頼する」
暮雨「鴉筆頭、久慈八条暮雨が、委細承った。小雨丸」
小雨丸「はっ」
何人かの黒子を伴って現れた小雨丸が、茶を片付けるとともに、暮雨の前に一枚の紙と筆、硯を置く。
筆をとった暮雨が、何やら紙に書きつけていく。
エルザ「ローラン」
マルコシアス「ダンテ」
ローラン「御意」
ダンテ「si (はい)」
ローランが、熱した蝋を容れた器と銀印。ダンテがランプ取り出し、エルザとマルコシアスの前に置く。
暮雨が、二人の前に書状を広げると、エルザは蝋を垂らし銀印をおとす。
マルコシアスも、指に嵌めたイニシャルリングを熱すると、書状に押した。
最後に、暮雨が懐から短刀を取り出すと、指を切って血判を押す。
暮雨「これは、鴉が預からせて頂こう」
エルザ「頼むよ」
マルコシアス「さて、小難しい話は終わりだ。腹が減った」
暮雨「む。では、支度させて参ろう」
マルコシアス「あの蕎麦とかいうやつがいいな」
暮雨「む…」
エルザ「ははは。大丈夫だよ。蕎麦くらいまたいつでも贈るさ」
暮雨「真か?!」
マルコシアス「ハッハッハ!目の色が変わりやがったな!こいつぁ傑作だ」
エルザ「世話になってるからねぇ」
暮雨「かたじけない…!」
どこかで鹿威しが落ちる。




