第21話「奇術師マルコの持論」
シュヴァリエ邸。
玄関前の車止めに、マルコシアスのクラシックカーが止まっていた。
そこへ、白薔薇の団の正装で身を固めたエルザが階段を降りてくる。
マルコシアス「よう、エルザ。呼んでくれて嬉しいぜ。お嬢さん方もご機嫌よう」
ゾエ・ヴィヴィアン「ご機嫌よう、マルコシアス様」
マルグリット「ご、ご機嫌よう、マルコシアス様…」
エルザ「フッ…。ご足労頂いて悪いね。マルコシアス。…いい車じゃないか。新車かい?」
マルコシアス「あぁ…。イカしてるだろ?バカみてぇに燃費が悪いがな。乗りな」
ダンテが後部座席のドアを開け、エルザとローランが乗り込む。
続いてダンテとマルコシアスも乗り込むが、マルコシアスは運転席に座る。
エルザ「へえ?マルコシアス。あんたが運転するのかい?」
マルコシアス「あぁ。これでも若い頃は、よく闇レースに出たもんだ。奇術師マルコって呼ばれてたんだぜ?」
エルザ「イカサマばっかしてっからかい?」
マルコシアス「ヘッ。イカサマは駆け引きの内さ。見破れねえ方が悪い。…出すぜ。シートベルトがねえから何かあったらその辺に掴まりな」
エンジンがかかり、軽妙な音とともに、車が黒い煙を吐き出す。
そして、シュヴァリエ邸の正門までの道を駆け抜けた。
エルザ「…そっちの連れ。見ない顔だね」
マルコシアス「あ?あぁ、そういや初めてだったか?こいつは失敬」
エルザ「いや、こちらこそさ。私は、白薔薇の団、団長、シュヴァリエ家当主、エルザ・シュヴァリエだよ。知ってるだろうがね。こっちは近侍のローランだ」
頭を軽く下げ、会釈するローラン。
ダンテ「お初にお目にかかりやす。ご挨拶が遅れ、申し訳ありやせん。マルコシアスファミリー、ダンテ・ヴァレンティーノと申しやす。お見知りおきのほど、願いやす」
マルコシアス「おいおい。もうちっと愛想よくしろよ」
エルザ「いやいや、気に入ったよ。中々堂々としてるじゃないか」
ダンテ「恐れ入りやす」
マルコシアス「良かったな。ダンテ。せっかくだし親睦でも深めたらどうだ?長くなるからな。あぁ、そうだった。すまないなエルザ。寄り道させてもらうぜ」
エルザ「あぁ。構やしないよ。色々、話させてもらうからね」
ダンテ「はあ…」
エルザ「おや、嫌かい」
ダンテ「嫌じゃねえですが。自分は口下手なんで。楽しくねえと思いやす」
エルザ「そんなこたないさ。ここにも口下手がいる事だしね」
ローラン「…すみません」
エルザ「冗談だよ。…しかし、ダンテ。あんた随分腕が立ちそうだね。こんな良いの、どこで見つけてきたんだいマルコシアス」
マルコシアス「ん?あぁ…。まあ、仕事のいざこざでな」
ダンテ「親父には、良くしてもらってやす」
エルザ「喋りたくないってかい?これは悪いこと聞いちまったかね」
ダンテ「いえ、別に。自分がやらかしちまっただけっすから」
エルザ「良いんだよ。誰でもスネに傷の一つや二つあるもんさ。…もっと楽しいこと話そうかね。ローラン、何かないのかい」
ローラン「え…。私は…」
マルコシアス「はははっ。おいおい、あんまり若いのをいじめてやるなよ。俺たち年寄りが楽しめる話題なんて持ち合わせてねえさ」
エルザ「何言ってんだい。老け込むにはまだ早いよ。恋の一つや二つ、してみちゃどうだい」
マルコシアス「俺がかぁ?馬鹿言え。食わせなきゃいけねえ息子や娘がわんさかいるんだ。そっちで手一杯さ。お前さんこそ、どうなんだ」
エルザ「…私かい?そうさねぇ…」
窓の外に目をやるエルザ。
エルザ「私も忙しくてねぇ。…ローラン。お前はどうなんだい?相談に乗ってやるよ?」
ローラン「わ、私ですか。私は…」
エルザ「お前は頑固だからねえ。案外、年上が良いかもね。ドロテアなんてどうだい。お似合いだと思うよ?」
ローラン「……ドロテア様は、良い方です」
エルザ「はは。ま、あいつは酒癖悪いしね。…ダンテ。あんたはどうだい?」
ダンテ「あっしは…、そういうのとは縁がねえもんでして」
エルザ「へぇ…?そいつはいい事聞いたねえ」
ダンテ「…?どういうことですかい?」
エルザ「いやいや、こっちの話だよ。うちのメイドに1人、行き遅れがいてねぇ。……メイドと言や、マルコシアス。さっき、3人、玄関の前に並んでたろ?内ひとりがあんたにお熱みたいだよ?」
マルコシアス「ん?お前さんとこのお嬢さんがか?はっはっは。俺もまだまだ捨てたもんじゃないな」
マルコシアスがアクセルを踏み込んだ。




