第19話「暮雨の過去」
八咫烏神社。
その境内で、暮雨は一人、思いを馳せていた。
5年前。
雨の降る夜、暮雨が、許嫁の燕春と居るところを、刺客たちに囲まれている。
刺客たちの中で一際大柄な男、ジ・エンターテイナーと名前を変える前の東雲玄冬に、暮雨が吼える。
暮雨「玄冬!貴様!!」
ジ・エンターテイナー「悪く思うな。久慈八条家の因果が報いただけだ」
燕春「暮雨様と私の縁談を破談にすれば良いだけではありませんか。東雲家の家名に傷をつけるおつもりですか?」
ジ・エンターテイナー「お前が言えたことか!!東雲家が味わった雪辱を、よもや忘れたとは言わせまいぞ!!」
燕春「その禍根を断つための縁談だったはず。兄様は、我欲に溺れているだけです。目をお覚ましになって下さい」
暮雨「下がれ燕春。奴に通ずる言の葉など無い…!」
ジ・エンターテイナー「そうだ!!刀を抜け!!もはやそれでしか分かり合えぬ!!」
燕春「兄様!」
斬り結ぶ、暮雨とジ・エンターテイナー、その刺客たち。
刺客を次々と倒すものの、次第に傷を負い劣勢に追い込まれる暮雨。
暮雨「くっ……。ハァ…!ハァ…!」
ジ・エンターテイナー「終わりだ。因縁も…貴様も…!!」
暮雨「舐めるな…!!まだ終わらぬ…!!終わる事などできぬ…!!!」
暮雨がジ・エンターテイナーに斬りかかる。
鍔迫り合いを演じ、弾かれるように距離を取る二人。
間へ、燕春が割って入った。
ジ・エンターテイナー「そこをどけ!!燕春!!!」
燕春「退きませぬ」
暮雨「下がれ燕春!!」
燕春「下がりませぬ」
無理やり燕春を下がらせ、刀を構える暮雨と、それに応じるジ・エンターテイナー。
しかし、暮雨が下段に構えた刀に、燕春が自ら貫かれる。
ジ・エンターテイナー「ッ!!?」
暮雨「燕春…?馬鹿な…!!燕春!!!」
燕春「……どうか…、私の命一つで…。収めて下さいませ…」
暮雨「駄目だ燕春…!!何故…!!燕春!!燕春!!」
燕春「暮雨様……。どうか……」
そこで、回想は途切れる。
いつの間にか、八咫烏神社の境内に小雨丸と、ジョナサンが戻って来ていた。
暮雨がゆっくりと瞼を開く。
暮雨「報せを」
ジョナサン「ハッ!!エルザ殿に、言伝をバッチリ届けて参りマーシタ!!そして、エルザ殿からも言伝を預かってマース!!近々会いに来る…ト!!」
暮雨「大義だ。下がれ」
ジョナサン「イエス!!」
消えるジョナサン。
暮雨「…小雨丸」
小雨丸「…はっ。面目次第もございませぬ。スマイルを見失いました。…奴が温室に潜り込むところまでは追えたのですが…」
暮雨「…大義だった。お前は、引き続きスマイルの動向を追え。スマイルの手下もだ。失敗は許さぬ」
小雨丸「…はっ!!必ずや!!」
小雨丸も、その場から消える。
暮雨 (………。お前の命一つで…。何が変わったと言うのだ…。燕春………。この黒の街の……。何が…)
いつの間にか、雨は上がりきっていた。




