第17話「急あり、キツネの巣にネズミが落ちた」
温室での騒動からしばらく、エルザとローランはシュヴァリエ邸に帰ってきていた。
マルグリット・ゾエ「「お帰りなさいませ。エルザ様」」
エルザ「ああ…ご苦労。…なんだいありゃ」
エルザの見やる先には、見慣れない男の相手をするヴィヴィアンの姿があった。
男は、暮雨の言伝をエルザに伝えに来たジョナサンである。
ジョナサン「ダカーラ!!エルザ殿に直接届けるよう言われてるんデース!!エルザ殿を出しやがれクダサーイ!!」
ヴィヴィアン「ですから、エルザ様は只今ご不在ですので、また改めて…」
ジョナサン「イッツジョーキンッ!!!緊急事態なんデース!!すぐにお伝えしなければならないんデース!!早く出しやがれクダサーイ!!!」
ゾエ「1時間ほど前に突然押しかけてきて…、最初は私達がお相手していたのですが、話にならないから上の者を出せと言って聞かず…」
マルグリット「鴉の人らしいですけど、どうにも怪しくて…。エルザ様に言伝があるとかなんとか…」
エルザ「はぁ…。やれやれ」
ヴィヴィアンとジョナサンの方へ歩み寄っていくエルザ。
ジョナサン「ホントにホントにジョーキン!!シ〇ト!!ファ〇ク!!!街中探し回っても居ないシ!!!どうしろというんでースカ!!あぁン!!?」
エルザ「私に何か用かい」
ヴィヴィアン「お帰りなさいませ。エルザ様」
ジョナサン「Oh!!エルザ・シュヴァリエ殿!!お見受けいたしマース!!!」
ローラン「離れろ!!それ以上、許可なく近寄るな!!」
ジョナサンの前に立ちふさがるローラン。
ジョナサン「oh!分かりマーシタ!!では、エルザ殿。…急あり、キツネの巣にネズミが落ちた。…と。鴉筆頭、久慈八条暮雨暮雨より言伝デス」
エルザ「そうかい。ご苦労だったね」
ジョナサン「オーケー!!確かに伝えマーシタ!!それではこれに…」
エルザ「待ちな。こっちからも言伝だよ。近々会いに行くとね」
ジョナサン「OKデース!!では!!ハヴァナイスデイ!!」
途端に、その場から姿を消すジョナサン。
エルザ「ヴィヴィアン。来な」
ヴィヴィアン「はい。エルザ様」
ローランとヴィヴィアンを伴って、シュヴァリエ邸の玄関をくぐるエルザ。
そのまま執務室へと足を運ぶと、エルザは重厚な書き物机の前の、椅子へと腰掛ける。
エルザ「ヴィヴィアン」
ヴィヴィアン「はい。ヘルタースケルターの元へ送った茨の者達と連絡が取れず、定期報告もございません」
エルザ「……そうかい。ローラン、温室で行方不明になった団員の捜索を進めな」
ローラン「は…っ。では、失礼致します」
執務室を後にするローラン。
エルザ「やってくれたね…。うちの団員を4人も…」
横を向き、頬杖をつくエルザ。
ヴィヴィアンからはエルザの表情は見えない。
ヴィヴィアン「……。人員の選定を誤りました。申し訳ございません」
エルザ「………。いいや、私のミスだよ。部下を死なせてしまった」
ヴィヴィアン「……」
エルザ「…すぐに、マルコシアスに連絡を取りな。会合の席を設けたい」
ヴィヴィアン「はい。直ちに」
執務室を後にするヴィヴィアン。
その姿を見送ると、エルザは立ち上がる。
しばらく窓の外に目をやっていたエルザだったが、不意にジャンヌ・ダルクを鞘ごと剣帯から外すと、刀身を抜いて見つめ始めた。
エルザ「……。高くつくよ」
ジャンヌ・ダルクの刃に映ったエルザの眼は、信念に燃えていた。




