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第15話「フィガロ」

避難を続けるエルザたち。


しかし、黒衣を(まと)い、幅広の帽子を被った金髪碧眼の男が、エルザ達の行く手を(さえぎ)った。

彼はフィガロである。



エルザ「誰だい?ここいらじゃ見ない顔だねぇ」


フィガロ「フィガロ・ガルヴァーニ。あなた方の悪を止める者です」


エルザ「へえ、そうかい。今忙しいから後でにしておくれ」



歩を進めようとするエルザを前に、巨大な鎌の形をした魔具を取り出し、構えるフィガロ。



フィガロ「病める我らが隣人を、友を、閉じ込めて研究材料にする非道、見過ごすわけにはいきません。主の御下(みもと)で悔い改めなさい」


エルザ「なんだい、人権活動家か宗教家か知らないけど、随分と物騒じゃないか」



ローランに合図を送るエルザ。

ローランは、研究員たちを連れて避難を再開する。


それを見送るフィガロとエルザ。


二人は、廊下の中央で向かい合う。



エルザ「……。おや、行かせちまっていいのかい?」


フィガロ「構いません。早いか遅いかの違いでしかありませんから。彼らも貴女同様、後ほど悔い改めることになります」


エルザ「へえ?そいつは結構なことだね」


フィガロ「ええ…。実に結構です。さあ、罪を告白なさい。私が聞き届けましょう」


エルザ「罪…。罪ねえ…。強いて言うなら…、」



武器を構える二人。



エルザ「あんたをここで殺すってぐらいかねぇ!!」



サーベルで斬りかかるエルザ。


フィガロは、その斬撃を轟音と共に鎌で受け止める。

武器を合わせ、火花を散らしながら睨み合う二人。



エルザ「分かってんのかい…!!ここは白薔薇の団の管理下だよ…!そこに無許可で侵入したってことは、私直々に処断されたとしても文句は言えないねぇ!!!」



エルザが大きく切り払い、フィガロが吹き飛ばされるようにして距離を取る。



フィガロ「この世の財の全ては、主が我々に等しくお与えになった物…!その占有を声高に叫ぶなど傲慢の極み!!富めるものは、貧しきものに分け与える義務があるのです!!」



剣を手元で軽く払い、構え直すエルザ。



エルザ「ハッ!本気で言ってんのかい?全てを平等に分配なんてのは無理な話だよ!!子供にだってわかる事さね!!それに、富めるものの義務は貧しいものに分け与える事じゃない、貧しいものの為に富を使うことだ!!そんな事より、こっちは急いでるんだよ!!下らないお喋りをしてる暇があったらとっととかかってきな!!」


フィガロ「ハァッ!!!」



上段から振り下ろされる鎌を弾いて突きを繰り出すエルザ。


フィガロはそれをいなすと、鎌を短く持ち直してエルザの首へと斬りつける。



エルザ「チィッ!!死にな!!!」



すれすれで鎌をかわし、体制を低く構えたエルザは、下から一気に切り上げる。


フィガロは、鎌の柄で床を弾き、後方に飛んでかわした。



フィガロ「あなたはドライフラワー病に苦しむ者たちの気持ちが分からないのですか!!ドライフラワー病で愛する者を失っておいて、なお、苦しむ者たちから搾取を続けるのですか!!」


エルザ「知った風なことほざいてんじゃないよ!!どこのどいつから何を吹き込まれたんだい!!」



地面すれすれまで身を低くし、フィガロに突っ込むエルザ。


フィガロは、鎌で地面を低く薙ぎ払う。

エルザはそれを真上に切り払うと、その勢いのまま飛び上がって一回転し、今度はフィガロの直上から剣を叩きつける。


エルザの剣を、鎌で受け、片膝をつくフィガロ。



フィガロ「グッ…!!主は、全てをご存知です…!!」


エルザ「…ハッ!!なら私に歯向かうのが無駄だってことも教えてもらうんだね!!」



剣が鎌から離れるやいなや、フィガロに、エルザの長い脚が叩きつけられる。



フィガロ「グハッ…!!!」



ふっ飛ばされるフィガロ。

空中で体制を立て直し、地面に脚を付けるが、勢いを殺しきれず、横に一回転してしまう。


そこへ、エルザが追撃を見舞った。



フィガロ「くっ!!!暴食の枝よ!!」



とっさに、周囲を素早く切り払うフィガロ。

エルザも、直感でとっさに後ろへ飛び退る。


すると、フィガロが切り払った箇所は、ドライフラワー病患者の体表から生える花へと変質していた。



エルザ「へえ?」


フィガロ「…覚悟しなさい。貴女にも同じ苦しみを味わって頂きます」


エルザ「そうかい?後ろの奴にも同じことが言えるかねえ?」


フィガロ「?!」



フィガロが振り向くと、マウリツィオとマルコシアスが廊下の向こうから表れるところだった。



フィガロ「くっ…!分かりました。この場は一旦預けましょう。ですが、いずれは主のご意思が下る」


エルザ「逃がすと思ってんのかい!!」


フィガロ「ハッ!!!」



フィガロが鎌を大きく振るい、廊下の大部分が炎に変質する。

変質した部分からは、遠い地面が覗いていた。



フィガロ「罪は消えない」



フィガロは、夜の帳の中に消えていった。

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