第12話「温室」
ドロテア「いらっしゃ〜い。ごめんね〜、大したおもてなしも出来ないけど」
白衣を着た女性が、白一色で統一された施設の入り口でエルザを出迎える。
彼女は、ドライフラワー病研究者であり、エルザの知己でもある女性、ドロテアである。
エルザ「気にしないでいいよ。こっちこそ忙しい中、押しかけてすまないね」
ドロテア「何言ってるのよ。いつでも来なさいって。そして差し入れを寄越しなさい」
エルザ「なんだい。そっちが本命かい」
ドロテア「まさか。楽しみにはしてるけどね。本命は…ローラン君だったりしてー!」
ローラン「職務遂行中ですので」
ドロテア「あーん。冷たいー。女のコには優しくしないとモテないゾ☆」
エルザ「ははは。だとさ、ローラン」
ローラン「……職務遂行中ですので
」
目線をドロテアから反らしながら、エルザからの差し入れの入った袋を手渡すローラン。
ドロテア「ありがとね。…あっ!そうだ!!お礼に今度、研究所の若い娘紹介してあげようか!!ローラン君!!」
ローラン「い、いえ、結構です」
ドロテア「まぁまぁそう言わず!!」
ローラン「いえ…、本当に……」
エルザ「よしな。ローランは私一筋なんだからね」
ローランの肩を抱いて引き寄せるエルザ。
ローラン「しょ、しょ、職務遂行中ですので…!」
ドロテア「あらぁ〜。余計なお世話だったかしら〜。でもやっぱり、若い娘の方がいいわよね〜?」
エルザ「おや、そうなのかい?ローラン」
ローラン「わ、私は…!!しょしょ職務遂行中ですので!!」
エルザ「あははは!からかい甲斐のあるやつだね!!」
ドロテア「素直になりなよローラン君!じゃないと……お姉さんがエルザを獲っちゃうぞ!!」
エルザに抱きつくドロテア。
ローラン「駄目です!!」
エルザ・ドロテア「「おや」」
ローラン「あ……。と、とにかく、エルザ様!!視察の途中です!周囲の目も有りますし、ドロテア様もご自重下さい!!」
エルザ「ふふ。はいよ」
ドロテア「はいはい。じゃ、案内するから着いてきて」
ドロテアの案内で、各所を見て回るエルザ達。
エルザ「どうだい。最近、何かと物騒だけど、何も問題はないかい?」
ドロテア「ええ。白薔薇の団の人達も鴉の人達も、本当に良くやってくれてるわ。もう少し休ませてあげてもいいんじゃない?」
エルザ「いや、そういう訳にはいかない。警備を緩めるつもりはないよ。ここに何かあったら、街にかなりの被害が出るからね」
ドロテア「そうね…。私達も、責任を果たさないとね」
エルザ「良くやってるよ。お前たちは研究と治療に専念して、他は私に任せな」
ドロテア「頼もしいわ」
エルザ「…何か、進展はあったのかい?」
ドロテア「う〜ん、今の所、ライムライトへの反応と、副作用を纏めてるのが、もうじき終わるかなってとこ。本当は、実際の太陽光を使用したデータも取りたいんだけど、一年に一回じゃね」
エルザ「こればっかりはどうしようもないねえ。…それで?」
ドロテア「うん。ドライフラワー病罹患者は、ライムライトから発生する疑似太陽光を浴びると、動きが制限される、っていうのは前から分かってたけど、今回新たに、神経系にダメージが及ぶことが観測できた」
エルザ「ほう?」
ドロテア「正確に言えば、罹患者の体表から突き出てる花の方ね。あの花は、ドライフラワー病罹患者の神経系に微細な触手のような物を接続して、信号を送って罹患者の動きや思考に影響を及ぼすんだけど、その触手っていうのが、人間の神経系とほぼ同じ働きをしていて、疑似太陽光を浴びると、その触手が壊死するの」
エルザ「だから、一時的に動きが止まるって訳か」
ドロテア「そう。ただし、触手が接続してる、罹患者の神経系にもダメージが及ぶから、迂闊に実験が出来ないのよ」
エルザ「そうかい…」
ドロテア「犯罪者を使うにしても、やはり倫理的な観点で問題があるし、ライムライトだって限りがあるわ」
エルザ「でも、上手くやれば、花の方の神経系だけ殺せるんじゃないかい?」
ドロテア「そうね。そのためのアプローチを模索していくつもり。花を無くせば解決かどうかはまだ分からないけど」
エルザ「…やっと、糸口を掴んだね」
ドロテア「ええ。この黒の街の皆のお陰よ。絶対に無駄にはしないわ。…あっ、今の話、機密だからオフレコでね」
エルザ「分かってるよ。ローラン?」
ローラン「何も聴いていません」
エルザ「それでいい」
歩みを進めるエルザ達。
しかしその背後には怪しげな影があった。
スマイル「ボクはイイコト聞いちゃったけどね…。ハハッ…」
道化の姿をしたその影は、何処かへと姿を消すのだった。




