表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/105

第98話「光」

ヘルタースケルターが、自身の胸に刺さった燭台(しょくだい)ごとエルザの左腕を掴み、思い切り投げ飛ばす。



ヘルタースケルター『あああああッ!!!!』


エルザ「ぐぁああああっっ!!!!」



エルザの左腕が嫌な音を立てた。

既にかなり痛めていた腕が、限界を迎えたのだ。


苦悶(くもん)(うめ)き声を上げながら、床の上を転げ回り、のたうち回るエルザ。


ヘルタースケルターも、両手で胸を押さえ、痛みに(あえ)いでいる。



エルザ「あっがぁ…ああああ!!!」


ヘルタースケルター『痛い!!痛いぃ!!!』



エルザは一足早く(われ)を取り戻すと、ジャンヌ・ダルクを握った右手で床を叩いて起き上がり、ヘルタースケルター目掛けておぼつかない足取りで駆け出す。



エルザ「っ…ああぁあああ!!!」


ヘルタースケルター『許さない、許さない…!許さない!!エルザぁアアアア!!!』


エルザ「ジャンヌ・ダルク!!」



エルザの声を聞いたヘルタースケルターが、まばらになったツタを自身に巻き付けて身を守る。

だが、エルザの持つサーベルから障壁は展開されなかった。


障壁を張るフリをしただけだ。


動きの止まったヘルタースケルターに、エルザがジャンヌ・ダルクの刀身を渾身(こんしん)の力で突き込む。



エルザ「っはぁあ!!」



ジャンヌ・ダルクが、ヘルタースケルターの胸に()き立った。



ヘルタースケルター『イヤァアアアアアアア!!!!!!』



エルザがジャンヌ・ダルクの一撃を見舞った箇所(かしょ)は、燭台が刺さったのと同じ場所だった。



エルザ「っあああ!!!」



エルザが、更にジャンヌ・ダルクを深く(えぐ)り込む。



ヘルタースケルター『アアアアアアァァァァァ!!!!!』



たまらず、ヘルタースケルターが、ツタを滅茶苦茶に振り回す。

エルザは、受けることも避けることも出来ず、もろに攻撃を喰らってしまった。



エルザ「ッ…ガフっ!!!…ァ!!」



エルザは、円卓のある部屋の方へと吹き飛ばされた。

ドアを突き破り、円卓を自身の身体で粉々に破壊してようやく止まる。



エルザ「…く……ぁ……」



力なく床に倒れ伏すエルザ。


そこへよろよろと歩み寄る足音。

エルザには、顔を上げる力も無かった。



ヘルタースケルター『…エルザぁ…!ッ…エルザ…!!』


エルザ「……ぅ…」



刻一刻(こくいっこく)と距離を縮めるヘルタースケルターに対して、エルザが出来ることは何も無かった。



エルザ (…負ける?…私が負ける?嫌だ…!私が負けたら!そんなの…!!絶対に…!)


ヘルタースケルター『…これで、終わりよ…!!』


エルザ「…動け……!!動け…ぇっ…!!!」



エルザが、身体に力を込めようとするが、右手がピクリと動くのみで、立ち上がれない。

ヘルタースケルターが、ツタの1本を振り上げる。


と、そこへ。



セバスチャン「我が(あるじ)に何をする!」



巨大な大剣型の魔具、サンジェルマンを振り上げたセバスチャンが、割り込んだ。



エルザ「………セバ…ス…」



ツタを打ち払い、ヘルタースケルターを押し戻すセバスチャン。



ヘルタースケルター『ッああ!!!いつもいつも…!皆、私の…!!!』



ヘルタースケルターが、激昂(げっこう)する。


全身を激しく紅く光らせるヘルタースケルター。

セバスチャン目掛けて真っ赤な拳を振り抜く。



ヘルタースケルター『邪魔をするなぁあああああ!!!!!』



セバスチャンは、両手に持った魔具、サンジェルマンを交差(こうさ)させて攻撃を受け止める。



エルザ「セバス……!」


セバスチャン「エルザ様。私めにお任せを」



ヘルタースケルターの攻撃を受けきれず、サンジェルマンにヒビが入った。

サンジェルマンの能力による代償(だいしょう)で、セバスチャンが深い傷を負う。



エルザ「セバス…ッ!!!」



血を流すセバスチャンが、エルザの方を振り返った。



セバスチャン「ほっほ。なぁに。この歳になればちっとも(こた)えませんとも」



セバスチャンが、渾身(こんしん)の力でヘルタースケルターを押し返し、空中へと弾き飛ばす。



ヘルタースケルター『っああ!!』



セバスチャンが魔具、サンジェルマンを握り、告げる。



セバスチャン「絶望伯 (サンジェルマン)」



黒の街の空に向けて、一条の光が放たれた。

セバスチャンの命と引き換えに放たれたその光は、議事堂の屋根を吹き飛ばし、黒の街を白一色に染め上げる。



エルザ「セバスゥウウウウウーー!!!!!」



そして、静寂が満ちた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ