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プロローグ
何となく分かっていた。
でもずっと見ない振りをしてきた。
「リリー」
私の名を呼んで彼が微笑む。
優しく紡がれるその声が好きだった。
「ケビン様」
王族にしか受け継がれない彼のグリーンの瞳。
その瞳には、誰が映っているのかしら。
「もう、やめましょう」
「何の話だ?」
私の言葉に彼が首を傾げる。
お国の為に平気で自分を捧げる、責任感の強い人。
そんなあなたを、尊敬していた。
「私との婚約を、解消して下さい」
何となく分かっていた。
でもずっと見ない振りをしてきた。
愛しの彼には、私ではない愛する人がいる。