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八十一話 レベル差


「誰だよテメェ、ってアナライズアーツのマスターかよ……」


 倒れる秋渡と、それを見下す男。


「なぁ、ロランス。お前の目的はなんだ?」


 ロランス・モロー。それがこいつの名前にして、世界に六人しかいないSランク探索者の一人。

 そして、間違いなく明確に俺の敵だ。


 問題は、これがギルド単位での画策なのか、それともこいつ個人の策謀なのか。

 知りたい事は多くあるが、それよりもまずは……


「でも、その前に……」


 秋渡は返して貰おうか。


 歩いていく。ロランスの先に居る秋渡へ向けて。


「なんだよお前、鑑定士なんて非戦闘職が俺に勝てるつもりかよ。出て来たとこ残念だが、お前ごとぶっ潰しても俺は全く困らないんだぜ?」


 俺に向けて、ロランスが拳を振るう。

 その速度は高速で、その剛腕は強力だ。


 けれど、ただそれだけだ。


 俺は頭を落とし、拳を掴んで相手の膂力を利用して転ばせる。


「テメェ……!」


 直ぐに立ち上がったロランスは蹴りを放ってきた。

 大股で放たれる回し蹴りを、最小限の動きで掻い潜る。注視していれば当たるような速度じゃない技術も普通だ。


「お前、一体何をしてやがる……」


 ロランスの疑問を聞き流し、いつの間にか位置関係が逆になっていた俺はそのままロランスと俺の間に魔壁を展開し秋渡の元まで辿り着く。


「大丈夫か?」


「マスター……すいません……」


 息も絶え絶えに成りながらも、俺に謝罪の言葉を口にする。


「いいや、俺のミスだ。助けようと思えばもっと早く助けられていたのに、情報欲しさに囮の様な扱いをしたんだ……」


「なんだ……だったらトーマや耶散が危険な目に会う事は無かったんですね」


 秋渡は「良かった……」と続けた。


 本当に情けない話だ。

 メリットとデメリットを天秤に掛け、その中に俺を慕って来てくれた人間を入れていた。死ぬことは無いと高をくくっていた。

 情報なんかよりよっぽど重要な事が幾つもあると言うのに。


「悪かった。秋渡、ここは俺に任せてくれ」


「お願いします。力及ばす申し訳ないっす」


「いいや、お前はお前の仕事をしっかりとしてくれた」


 亀を釣り上げ、この男を釣り上げた。

 その功績は称賛に値する。俺は秋渡にポーションを飲ませる。


「ギルドマスターってのも大変なんだな。特に雑魚みてぇな奴がギルドに居ると、その尻ぬぐいもしなくちゃいけなくなるって事だ」


「心配は必要ないな。お前より、よっぽど秋渡の方が強いんだから」


「はぁ? 目が良すぎると頭がイカれるのか? 鑑定士……」


 顎を天へ突き出し、男は横柄な態度でそう吐き捨てる。


「主を守る処か飼いならされてるだけの『騎士』が何か言ったか?」


「ッチ……うるせぇよ……」


 これ以上言葉は必要ない。

 必要な言葉を言ってくれるとも思えないからだ。

 だからこそ、無理矢理口を開かせよう。


「お前の中身の無い頭に聞くよりも、身体に聞いた方が有益な情報が手に入りそうだ」


 収納から剣、いや刀を取り出す。

 魔石刀。玲十郎の剣術は刀を使用した物だった。故、紅蓮に頼んで刀型に形状を変形してもらった。

 剣士としての俺の実力、それを確かめる相手としてお前は非常に都合がいい。


 鞘から刃を抜き放つ。黒紫に輝く刀身が露わになった。


「来い」


「ぶっ殺してやるよ!」


 拳を振り上げた男は、高速の一撃を以て俺の身体を砕きに来る。

 しかし、その拳は空を切る。

 二度、三度、四度、五度。何度やっても同じ事だ。


 俺は俺のスキルを複合的に発動し、対象の全ての動きを見切っている。

 それが為せるのは玲十郎との剣術の修行の成果だ。


「先も動きも空も能力も、そして強さも。俺はお前の全てが視えている」


 【先視】は相手の未来を見る。

 【透視】により筋繊維や骨格の動きを把握。

 【天眼】が天空からの視点を得る。

 そして【鑑定】で相手の底を見抜き。

 【龍眼】は対象との実力差を正確に写す。


「そのまま何も変わらないなら、万に一つも勝ち目は無いぞ?」


 俺は剣を一合も合わせてすらいない。

 それでも、実力の差は明白だった。


「はっ!」


 刀で薙いだら殺してしまう。

 だから、拳を握りしめ顔面に見舞う。


「うっ!」


 動きを完璧に見切っているのだから、攻撃も必中だ。

 ただ、やはり俺の身体能力ではたかが知れている。

 防御能力を向上させる系統のスキルを保有する『騎士』相手に素手での攻撃はあまり効果を発揮しない。


 けれど、それでいい。


 ロランスの振るった拳を回避し、その動作の流れで鳩尾を蹴り飛ばす。


「ふざけるなよっ! この俺がぁ!」


 蹴りを受け止め、掴み投げる。

 ミシミシと足首の骨が鳴った。


「お前如きに!」


 それでもロランスは挑みかかってくる。


「聞かせて貰おうか、お前たちはどうやってレベルを上げている?」


 ダンジョンが発生し始めてから50年。今までレベル150を超えた探索者の話など一度もでなかった。

 けれど、この二年半で六人ものSランク探索者が出現し、うち5名が同じギルドに在籍している。


 俺が公開した情報が元になったレベルアップなら納得できる。けれどどう見てもこいつはそれじゃない。



―――


ロランス・モロー

クラス『ナイト』

レベル『77(154)』


体内魔力量1840(3380)

身体強化率3580(8200)


スキル【シバルリー31】【スチールハート29】【カバーヘイト27】【ドライブ25】【ライトニングドライブ23】【ストーンブレイク21】【ラースナイト19】【オーガソウル18】


状態【階位昇華】


―――



 こいつは恒久的なレベルアップとは違う、外的要因によるレベルアップを施されている。


「もう一度聞こう。お前をレベルアップさせているのは誰だ?」

「面白そう!」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんか主人公の喋り方が途端にキモくなった気がする。 あと格闘避けながら味方のところに歩いていくのって、絵面にするとめっちゃシュールだと思うの。 強者ムーヴなんだけど何か間違ってると言…
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