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七十八話 宝石亀


 俺は調べていた。


 現在、ワダツミの最大到達階層は第三階層。

 それは、あれから一ヵ月経った今でも更新されてはいない。

 第三階層への探索作戦はあれ以降何度も実行されている。しかし、戻って来た人数は極少数だった。


 どうやら、第三階層のボスモンスター『アンデッドクイーン』の能力が、二年半前の大規模探索時よりも強くなっていると思われる。

 軍勢の規模もそうだが、問題は人型モンスターを使役している点だ。橘さんが倒した第一階層と第二階層の人型がアンデッドクイーンに加わり第三階層で活動している。


 つまり、第三階層を攻略するには人型三体を同時に相手にしなければならないと言う事になる。

 更に作戦の生存者の報告では、アンデッドクイーンは髑髏(ドクロ)を持っていたそうだ。それがなんの髑髏か、俺には予想が付く。


 俺たちは火元を最後まで確認せず、死亡を確認して直ぐにその場を離れた。


 もしも、アンデッドクイーンが頭蓋だけで何かをできるのなら……

 アンデッドクイーンの力は死体を操る力、頭蓋も死体である事に違いはないという事なのだろうか。

 少なくとも第三階層の階層主が強化されているというのは事実だ。それを突破するには人類の現戦力では難しい様に思える。


 と言ってもだ、この二年半探索者側に何の進歩も無かったという事も無い。


 日夜探索者の情報は更新される。

 探索者のランク制度にも大きな変化があった。


 今まで探索者にはAからE、それとレベル10以下のビギナーランクの六つのランクしか存在しなかった。

 しかし、現在はそこに一つ加わっている。


 レベル90以上のAランクの更に上、レベル150オーバーの探索者だけが認定される新たなランク、Sランクが制定されたのだ。

 現在、世界中の探索者の中で最高峰であるSランクと認められる人物は俺を除いて六人しかいない。


 その中の五名は現在同じギルドへ所属しており、そしてそのギルドはこの都市に腰を据えている。

 しかし、彼らは第三階層をギルドの独力で突破したいらしく迷宮都市の協力要請を断っていると蘇衣然から聞いた。


 だから俺は調べている。

 そんな世界トップの座に位置するギルドがどうやってそんな力を手に入れたのか。

 そして、敵なのか味方なのか。




 ―――




「ウミガメ……」


「だね……」


「ですね……」


 トーマ、秋渡、耶散の三人はポカンと口を開けて釣り上げられた巨大なウミガメを見上げていた。

 普通の一軒家程度のサイズがありそうなそのウミガメは、攻撃してくる気配も見せず眠たげな眼で三人を見下ろしていた。


 ゼニクルスは横になって鼻をほじりながらその様子を眺めている。


「調べてみるしかないよな……」


 秋渡が腰に携えた魔石剣に手をかけ、亀に近づいていく。

 ただ、亀は何の抵抗もする様子が無く秋渡に何かする事は無かった。


 調べてみると、亀の甲羅の天辺に宝石がはめ込まれているのが分かった。


「なんだこれ」


 青の様な、緑の様な、紫の様な、そんな光を放つ不思議な宝石に秋渡が触れる。


 その瞬間、その場所から秋渡が――消えた。


「秋渡君!?」


 耶散が魔石杖を構え警戒を強めた。

 亀を睨みつけ、しかし攻撃していい物か悩む。


 睨み合いが続く事数十秒……


「あ、ただいま」


 秋渡があっけらかんとした様子でまた現れた。


「どういう事ですか?」


 亀の背から降りて来た秋渡は、自分の身に降りかかった出来事を話した。


「あの宝石が転移装置になってるみたい。行先はなんか神殿? みたいな場所だった。そっちにも同じ宝石があってそれを触ったらこっちに戻ってこれたんだよ」


「心配させないでよ……」


「ごめんごめん」


 探索者としてはその神殿も調べたいところだが、まずは迷宮都市や自分たちのマスターへの報告が先だろう。

 そう結論を下した秋渡が、帰還を提示しようとしていたその瞬間だった。


「なっ……」


「どうしたの?」


 耶散の顔が険しく代わる。


「結界が一撃で破壊された!?」


 下級の結界魔法とは言え、Cランクモンスター程度の攻撃なら数発は耐える作りになっている。

 Bランクでもここまで一瞬で破壊するのは難しく、この階層にはAランクモンスターの目撃情報は無いはず。

 それでも一撃で結界が破られたという事は、相手は――モンスターでは無い可能性がある、という事だ。

「面白そう!」

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