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六十八話 鑑定士と操縦士


「素晴らしいよ。僕とは違う選択だ。それじゃあ次に、僕と君のどちらの選択が正しいのか証明してはくれないか?」


 止まっていたウンディーネとドワーフが動き始める。

 更に橘さんの周りに居た元探索者の死体たちが動き始める。


「貴方のスキルじゃ貴方の望む結果は得られない。それでも、俺と戦うんですか?」


「そうだよ。それとも君なら、妻を治せるのかい?」


「……」


 既に死んでしまった人間の意識を覚醒させる、つまり生き返す方法など俺は持っていない。

 エリクサーでも戻らないとなると、少なくとも俺には何も思いつかない。

 そして、そんな方法が実在するのかすら疑わしい。


 確かにダンジョンには無限の可能性があると誰かが言った。

 けれど、死者蘇生のアイテムなど情報すらなく探索者の能力でも前例は一切ない。

 唯一可能性があった橘さんのスキルも、俺の鑑定がレベルアップした事で行う事ができるようになった未来の可能性スキルの検索にも一切引っかからなかった。

 可能性が0というのは確かに嘘だが、しかし可能性があるなんて言っていい確率だとも思えない。


「無理なら、僕のやる事に君が口出しするのは間違いだ」


 俺以外の誰が今の橘さんに口出しできるというのか。

 本当に圧倒的なレベルだ。

 既に300レベルを超えている。

 俺も現在のレベルは200の前半だ。


 単純な肉体能力だけでも圧倒されるだろう。

 それはリオンさんがいるこの状況でも例外ではない。

 更に橘さんの強みは、大群を使役しての戦術規模での攻撃。

 物量差は圧倒的で、単独能力も相手に軍配が上がる。


 勝ち目がある様には見えない。

 ゼニクルスを召喚して逃げる? いや無理だな、この神気を宿した結界がある限り転移で内外を移動する事はできない。


 発生させているドワーフを倒さない限り、逃げる事すらできない。


「兵霊」


「今度こそ役に立って見せる。神獣召喚」


 俺とリオンさんは召喚スキルを発動させる。

 五体の半透明な兵士と、蛇神オロチが召喚された。


「諦めなければどんな願いも叶うなんて事が無いのだと、僕は身をもって知っている」


 橘さんの声に合わせてウンディーネとドワーフが動き始める。

 ウンディーネ一体でリオンさんは腕を切り落とされたのだ、カグツチとの相性が悪かったとはいえ相手が二体になれば単純に必要な戦力は二倍になる。

 けれど、俺の戦闘能力なんて高が知れている。

 ゼニクルスは召喚中だから連れてこれない。一度送還すれば可能だろうが、結界の力で外にいるゼニクルスとの接続が切れている。

 同じ理由で念話も使えない。


「橘さん、俺も成長しましたよ」


「えぇ、楽しみですよ」


 模倣。

 これは俺が鑑定した対象のスキルを一つコピーするスキル。

 俺がコピーするのは当然、【操縦】だ。


「奪えないまでも、動きを止める!」


 視界内の全てのゾンビに対してスキルを発動させる。


地力レベルが違うでしょう」


 スキルレベルも基本レベルも橘さんの方が上、動きを止める事すら困難か。

 けれど、動きは少し鈍っている。それで十分成果だ。


「リオンさん、あれを使ってくれ」


「良いんですか? まだ……」


「大丈夫」


 リオンさんの使役する神仏が二対になった事で、降霊召喚の定員が増えた。

 今のリオンさんは二体の神獣を二人の人物に同時に宿す降霊召喚が発動できる。


 俺が宿すのは炎神カグツチ。


 リオンさんが力を発動させると燃える様な神気が身体を覆った。


 基本能力はレベルでカバーする。


「諦めない姿勢は認めます。ですが、ドワーフとウンディーネ以外にも幾人もの探索者と僕が居るんですよ?」


 あぁ、端から俺とリオンさんだけで倒すつもりは無いですよ。

 けど、多分直ぐに橘さんのゾンビの中心部であるここに味方が到着するのは考え難い。

 だったら、少しでも時間を稼ぎ味方が到着するまでの時間を稼ぐ。


 透視も岩の結界は貫通できない。

 けれど、俺はあの人たちの強さを知っている。

 黒峰さんに、セブンさんに、千宮司剣や、各国の最上のギルドマスターたちが紅蓮の作った魔石武器を担いでいる。

 AランクやBランクのモンスターが殆どの橘さんの使役するモンスターが相手なら、攻略は容易くもないが難しくも無いはずだ。


「俺は、まだ死ねないんですよ」


「それは僕も同じですよ」


 全ての人とモンスターが武器と魔法を構え、そして静止する。

 睨み合い、何かのきっかけで即座に戦闘が開始されるだろう。


 そんな状態で橘さんの後方から「ガタッ」と大きな音がした。


 棺桶だ。

 それが一人でに動いた。


「なっ! 天空君、これは君の仕業ですか?」


 俺が棺桶に何かしたと思ったのだろう、怒りの形相で橘さんはそう問いかけて来る。


「俺じゃない……」


 棺桶が内側から開き、白装束を纏った黒髪の女性が姿を現した。


「貴方……」


 その女性は声を発した。

 透き通るような奇麗な声。


「君なのか……?」


 橘さんは目尻に涙を浮かべ、一歩一歩と彼女へ歩み寄っていく。

 女性も手を広げ、橘さんに近づいて行った。


「秀君、これって一体……?」


 俺は無意識に鑑定を発動させる。



―――

アンデッドクイーン

ランクS

魔力ランクSS

身体ランクA

スキル【死者使役】【仮死状態】【死体憑依】【霊体化】

―――



 俺の眼は、俺に全てを理解させる。

 けれど、それはとっくに遅かった。


「橘さん! そいつは違う!」


「ぁぁ……な、なんで……」


 抱き合う橘さんと女性。

 そして、女性の腕が橘さんの背中、心臓部に腕を突き刺していた。

「面白そう!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初の頃は良い子だったのになー 短期間で力を手に入れてから、ドンドンどんどん傲慢になっていくのがなぁ・・・ 偽善者で傲慢で無謀って、嫌な子に育ったもんだ。
[一言] 死体憑依って………そういう……
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