五十三話 戦闘職
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レベルアップに関する動画は、ダークエルフの討伐作戦や魔石武器の販売動画の再生数を優に超え、チャンネルの登録者数も爆増する結果になった。
現在、この世界で最も巨大なこの動画投稿サイトにて日本で、最も登録者数を持つチャンネルは『ソラソラのモンスター鑑定チャンネル』となっている。
その登録者数、1300万人。
更に、レベルアップに関する動画の再生回数が5億回を突破し、それに伴って全ての動画の再生回数が引き上げられる形で増えて行っていた。
その動画に対しての反応は様々だったが、大まかには二つの意見に分類される。
『公開してくれてありがとう』
『何故今まで隠していたのか』
天空秀の持っていた情報は、彼が独自の調査とクラス能力の応用によって得た物であり、それをいつどこで公開しようが何の問題も存在しない。
けれど、生産職や支援職の中にはもっと前からその情報を手にしていればもっと早くから優遇されていたと考える者もいた。
「自分勝手も良い所だ。社長は自分の利益をなげうって公開したというのに……」
「でも、それがネット上の民衆という物ですよ」
パソコンの画面を見ながら、二人の人物がアナライズアーツ本部の一室で会議を行っていた。
その人物は、動画編集のチーフを行っている斉藤信二と、雇われ弁護士をしている清水咲楽だった。
ここに社長である天空秀が居ないのは、彼が動画に関する事に殆ど口出しをしないからだ。
今、天空秀の目的はSランクダンジョンの攻略に向いている。
その理由は自分がSランクダンジョンを出現させた可能性と、幼馴染を助ける方法がSランクダンジョンにある可能性があるかもしれないという事だった。
だから、動画は出すがそれは最低限であり、Sランクダンジョン攻略に必要とあれば動画を使う事もあるが、レベルアップに関する秘密の様な情報をそう幾つも持っている訳でもない。
「今や社長は日本一の動画配信者です。そして、恐らく探索者としても最も高いレベルに居る」
斉藤信二は天空秀のレベルを考え戦慄を覚える。世界中の探索者が天空秀に経験値を分配しているのだという事を再認識した。
「そうですよね。半年以上をかけて動画を配信し続けた今の社長がどれだけのレベルを持っているのか想像もできません」
「そうなってくると、一番の問題は……」
「えぇ、このギルドの戦力がやはり少なすぎる」
「戦闘職はリオンさん、秋渡君、耶散さんの三人。紅蓮君と社長は生産職と支援職ですもんね」
「それも社長自らダンジョンに行くなんてクラスとしても、立場としても普通じゃないですし」
戦闘職以外の探索者が冷遇されていたのは、単純にダンジョン内での活躍の殆どを戦闘職が出すからだ。
天空秀は確かに高いレベルと様々なスキルを持つが、それでも単純な戦闘能力はゼニクルス無しではたかが知れている。
「うちのギルドももっと大所帯にするべき……でしょうね」
「ですね。最低でも100人、いや、もっと多くてもおかしくないですよ」
清水咲楽の提案は尤もだ。最高レベル保持者、そして日本一の動画配信者。そんな肩書を持っているギルドであるにも関わらず、そのメンバーは十数人しかいない。
「でも、社長やリオンさんと並ぶ探索者となると早々居る訳じゃない」
「人材に関しても社長の鑑定次第な所がありますもんね」
「えぇ、Sランクダンジョンの攻略という物が目標になっている以上、それに耐えうる探索者を探すのは容易な事じゃないですね」
「前の新規採用も結局社長は紅蓮君を含めた三人しか選ばなかったらしいですしね」
「そうですね。それも戦闘職として雇った訳ではないみたいですし」
Sランクダンジョン『ワダツミ』の拠点となる迷宮都市が完成するまで、まだ2、3年の時間がかかる。
その間に探索者を増やし、探索の効率を上げる必要があると二人は考えているのだ。
しかし、天空秀のメガネに叶うような人材は今の所発見されていないか、既に別のギルドで高い役職に付いている。
戦闘職ともなると尚更フリーの人間は少ない。
そんな風に考え、そしてどうするべきかと話し合っている最中の事だった。
「頼もう!! アナライズアーツの団員になる事を所望する!」
ビルの玄関に居る男が大声を出し、その大声はビル全体に響いた。
「面白そう!」
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