五十話 武器商売
魔石武器は大反響を呼んだ。
一本二千万という額にも関わらず、配信をしたその日に数百件の予約が掛かった。
日本のギルドや探索者以外にも海外のギルドや探索者からも多くの注文が殺到した。
一気に我が社の筆頭利益が動画から武器製作へと移動した形だ。
「それで、峰岸紅蓮に一つ話しておかなければならない事がある」
「はい、何ですか社長……?」
今、俺と峰岸紅蓮は社長室で秘密の対談を行っていた。
いや、ギルドメンバーは殆ど知っているから密談じゃないのだけど。
「正直な話、魔石武器を作れるのは今の所貴方一人なのだからこのギルドを辞めて利益の全てを懐に入れた方が貴方の利益は多くなる筈だ。だから、辞めるかどうかを聞こうと思って呼び出したんだ」
この世界で魔石武器という特異な武器を作り出す事のできる『鍛冶師』は、今目の前にいる峰岸紅蓮ただ一人だ。
なら、個人で商売をした方が彼の利益率は多くなる。
「正直、俺の目的は探索者全体の戦力強化だから、貴方が望むのならホームページも上げるよ」
Sランクダンジョン攻略。
それに必要なのは探索者の全体的な強化。
そして目を付けたのが鍛冶師の彼だ。
峰岸紅蓮は十分な働きをしてくれた。
正直ギルドに残ってくれれば助かるが、俺が育ててやったんだぞみたいな事は言うつもりはない。
探索者が強化できるのなら、それでいい訳だし。
「えっ、俺クビですか!?」
「いやいや、貴方が望むならという話だ」
「何言ってんすか望む訳無いじゃないですか。俺がこうして一人前みたいに扱われてるのは全部社長のお陰です。それで出ていくとか、俺はそんな薄情者じゃないですよ!」
「おぉ、いやそう言ってくれるなら助かるよ」
「それと、貴方って呼ぶの止めてくれませんか? 俺の事は紅蓮って呼んでください。なんせ貴方は社長なんですから。部下にそれじゃ外に示しが付かないんじゃないですか?」
「そ、そうかな。これでも敬語とか使わない様にしてたつもりなんだけど……」
「そうですよ。もっと堂々としてた方がかっこいいです!」
「なるほど。分かった、それじゃあ紅蓮と呼ばせてもらう。残ってくれて助かる」
「うす。いつでも、なんでも命令してください」
そうして密談は終わった。
契約内容だが、魔石武器の売り上げについては紅蓮が5で会社が5を得る様にした。
彼も納得してくれての数字だ。もっと自分は低くていいっす、とか言い出したので流石にそれは止めた。
世界で唯一人の製作者に売り上げ五割も貰って、更にとか流石に無理だから。
紅蓮の今の製作能力があれば、魔石武器を一日で30本ほど作る事が可能だ。
それでも一週間待ちとかになってるのが怖いが、直に注文も止むだろう。
そんな甘い考えだったのが悪かった。
「社長! 『鮮血の偶像』からも魔石武器の依頼です! 100本ほど納品して欲しいそうです!」
20億円だぞ分かってんのか。
「こっちは『オルトロスの主』から10本です!」
「千剣の盃からも30本!」
「パープルミストからも200本!」
おぉ……マジかよ。
電話対応をしてくれている清水さんや斎藤さんから、そんな報告が入った。
「わ、分かった。取り合えず知り合いギルドからは三割引きで受けといてくれ」
流石にお世話になったギルドに満額払わせるわけには行かない。
というか、まさかこんな大口依頼が何件も入るとは……
どうやら俺が考えていた以上に魔石武器は凄い評価を受けているようだ。
「社長、少しお話が!」
「なんだ紅蓮」
流石にこの件数の依頼だと億劫にでもなったのか、密談を終えデスクに戻って直ぐにまた紅蓮と話し合いの席についた。
「どうやら魔石武器の性能なんですけど、制作時に使った魔石のランクで性能が変わるっぽいんです」
「あぁ、それは俺の鑑定でも見えてる」
「今まで使ってたのはCランクモンスターの魔石です。それでスキルスロットは一つ」
「そうだな」
「社長、ダークエルフの魔石を俺に下さい!」
そう言って紅蓮は頭を下げて来た。
なるほど、そう来たか。
「ダークエルフの、AAランクモンスターの魔石なら、スキルスロットを4つまで増やせます。それを社長の専用武器として、俺に作らせて下さい!」
確かにダークエルフの魔石は俺が持っているし、その使い道も決まっていない。
「よし、良いだろう」
俺よりリオンさんとかが使った方が良いと思うが、それは出来てから決めればいい事だ。
「ありがとうございます!」
「面白そう!」
と思って頂けましたらブックマークと【評価】の方よろしくお願いします。
評価は画面下の【★星マーク】から可能です!
1から5までもちろん正直な気持ちで構いませんので是非。