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四十五話 斉藤信二の動画更新


 その日、とある動画配信チャンネルに一本の動画が上がった。


 その動画は『ダークエルフ討伐』という簡素なタイトルで在りながら、そのチャンネルに存在するどんな動画よりも多くの再生回数を叩き出した。


 チャンネル主である天空秀がそれを投稿すると言った時、周りの殆どの人がそれを否定した。

 けれど、断固とし彼はこの動画を公開すると言い、そして他ギルドからの許可を取って来た。

 そこまでされて、動画編集チームのチーフであったとしても、たかが一社員である僕にそれを止める事は出来なかった。


 これは、その動画に対するコメントを一部抜粋した記録である。



『時系列

 ダークエルフの討伐作戦開始 14時00分

 ダークエルフとの戦闘時間 1時間03分

 Sランクダンジョン『ワダツミ』の発生及びスタンピードの発生 15時22分

 Sランクダンジョンのスタンピードとアジア太平洋連合の開戦 16時05分

 津波を起こしたモンスターの出現、津波発生 16時24分

 後は大体知っての通り、その後全てのモンスターがダンジョンに引き上げていった』


『ダークエルフが倒された事が、ダンジョン発生のトリガーって説もあるらしいけど、実際確かめようないよね』


『被災地の事も考えて。こんな動画あげるなんて信じられない。この動画上げてる人の人間性疑う』


『ここのマスターだってスタンピードの発生地まで行って津波の規模縮小させてたって他ギルドの探索者が証言してるぞ』


『起こした原因がこいつにあるなら関係無いだろ。100悪かったのが50悪いに減った感じ。五十歩百歩じゃん』


『探索者の仕事はダンジョンを攻略する事。別に悪い事なんか一つもしてないだろ』


『最初からダークエルフ倒したらダンジョンが発生するって情報あったなら兎も角、それ無しで予見しとくなんて無理だろ』


『そもそも因果関係が確実にあるって言い切る根拠ないしな』


『タイミングは良かった。それとこの動画のダークエルフが言ってる言葉が、Sランクダンジョンの出現を示唆してるんだったら可能性もあった』


『この動画の言葉だけで、Sランクダンジョン発生の意図なんて読み取れる奴いる訳ないだろ』


『実際このダークエルフは人類のためじゃないって言い放ってるしな』


『そもそも知的生物なら友好的な関係築けなかったのか?』


『ちょっと前のダークエルフとの遭遇戦の動画見たけど、迷宮主の部屋から出て来て行き成り攻撃してきた感じだったから、友好的とか無理。相当力の差があればできたかもしれないけど……まあ無理だよなって……』


『ダークエルフ討伐も実質的に探索者は負けてる。現代兵器を無理矢理持ち込んでギリギリ勝てた感じだし』


『これって、現代兵器効くならAランクモンスターってあんまり強く無くね?』


『ダークエルフの推定ランクはAAランクね。最初の二体居る奴らはAだけど、合体した後はAA』


『現代兵器をダンジョンに持ち込むのは無理では無いけど、非常に困難。そもそもあの数の戦車とか大砲用意して倒せなかったら人類滅亡だろ』


『鑑定結果見たけど、魔法に特化してる感じだったから物理攻撃には弱いんじゃないかな。防御手段があんまりないって意味で。神気? が魔法無効化能力なのが一番の問題だったみたいだし』


『ま、現代兵器はダンジョン内のモンスター相手には有効とは言い難いってのが結論だよな。外に出て来たモンスター相手なら現代兵器も探索者と同じくらいの活躍はするみたいだが』


『これさ、例えばこのSランクダンジョンが攻略された後にもっと上のランクのダンジョンが出て来るみたいな可能性は無いのかな?』






 基本的に社長ギルドマスターを批判する内容と肯定する内容は半々と言ったところだ。

 それ以外にも、Sランクダンジョンや更なるスタンピードの発生に怯えるような内容のコメントが沢山送られてきている。


 そして、Sランクダンジョン以上のレベルのダンジョンへの恐怖も。


 社長は、被災地に対してこの動画によって得られた全ての収益を寄付している。

 それも公開しようと言ったが、うちの社長はどうやら世間の目に興味が無いのか、それとも何かプライドでもあるのか、自分を良く見せようとする努力をしない。


 SNSでも宣伝とかあんまりしないし。

 それでも彼にファンと呼ぶべき人間がついているのは、動画から彼の戦闘中の様子が伺い知れるからだろう。

 その冷静な雰囲気が、あの人の魅力にも繋がっているのだろう。


 さぁ、僕の仕事は社長をできる限り良く見せる編集をする事だ。

 頑張らないと。もし社長が悪役ヒールにでもなれば、この動画の価値を正しく判断されない可能性もある。


 この動画たちは人類の至宝となる価値の情報だ。

 それをどんな理由であっても埋もれさせるわけには行かない。

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