三十五話 ダークエルフ vs 人類2
百人の探索者がいるにも関わらず、戦闘に関与させない場所に配置したのは彼らが戦力にならないからだ。
実際、鮮血の偶像が探索した時の3名は成す術無くダークエルフの魔法に殺された事実を俺は知っている。
だから、後ろ百人の仕事は俺たちへの遠距離でのカバーになる。
初撃の召喚生物、戦闘時の魔法でのバックアップ。ポーションでの治癒が不可能な傷を負った場合のスキル治療。そんな要員たちだ。
だから、近接戦闘系は拠点護衛の数名以外は殆ど居ない。
俺たちの戦闘の舞台となる草原フィールドは見通しが良いから選んだ。
ここでなら、ダークエルフの魔法を後衛に届かせる事は無い。戦闘の舞台となる場所と、補給拠点とは200m程離れている。
ダークエルフの魔法でこの距離の攻撃は不可能だ。
そして、俺がこの場に居る理由だが、収納を持っているからだ。
物資の運搬を戦闘中にやるのは非情にリスキーだが、俺一人が戦場に居る事で物資が枯渇する心配は皆無になる。
しかし、やはり戦闘能力で劣る為リオンさんが護衛に着く予定だった。
だが、相手が二体となると……
ダークエルフは二体で現れた。
一人は魔法で空を跳びながらやって来ている。これはこの前の遠征で見た奴だ。
もう一人は雌のダークエルフ。こっちは凄まじい走行速度でこちらへ向かってきている。
魔法タイプと物理タイプってとこか……
「ゼニクルスと黒峰さんで男の方を抑えて。リオンさんとセブンさんで女の方を」
俺の指示を受けて、彼らは二人組同士に別れる。
リオンさんに守って貰う予定だったが、止めだ。自分の身は自分で護る。
俺は少しだけゼニクルスと黒峰さんのペアの方へ寄る。
こっちのアシストをメインでするべきだと判断したからだ。
「やぁ、君らはまた会ったね。けど、知らない人が何人かいるみたいだ」
「こいつらがダーが言ってた人間? あんまり強そうじゃ無いけど」
「強いなんて僕言ったっけ? そこそこやれたって言っただけだよ」
「こんなのに逃げられるなんて情けないわよ」
そんな会話をしながら、速度を落として彼らは俺たちの前に立ち並んだ。
迷宮主の部屋から迷宮主が出て来る。
その異常事態は既に想定の範囲内だから、誰も驚いては無い。
今驚いているのは、それが二体だったことだ。迷宮主は基本的に一体、そんな常識すらもこいつらには通用しないらしい。
「それで、何しに来たのかな? 召喚獣なんて嗾けて、あんなので倒せると思った?」
「思ってないさ。ここに招待したんだよ」
俺はニヤリと笑うダークエルフに笑みを返して答える。
「へぇ、じゃあ少しは勝算があるのかな?」
「炎系の最大規模! ゼニクルス、転移で躱せ!」
「御意!」
俺が言った瞬間、炎が場を支配するが、その熱に焼かれたのは地面から生える草木だけだった。
「やっぱりその能力めんどくさいね」
俺には新しく【先視】の力もある。
もう魔法に遅れをとる事は絶対にない。
「セブンさんはリオンさんを守って。リオンさんはその支援。大丈夫、やられても直ぐ治療できるからどんどん打ち合って」
「オーケー、リーダー」
もし女の方が物理タイプなら、こっちの近接最強はセブン・レッドだ。
ここをぶつけさせながら、リオンさんの神獣召喚の力で削るしかないだろう。
「私を抑えるつもりなの? 人間って身の程を弁えないから嫌いなのよ」
女のダークエルフが、一歩で距離をつめそのまま拳を振るう。
「アースドラゴン」
セブン・レッド、『ドラゴノイド』の力は自分を龍化させる事で様々な能力を向上させる事にある。
アースドラゴンの場合は、物理的な攻撃力と防御力が飛躍的に上がる。
それに伴ってセブンさんの身体には土色の鱗が生える。
「ッラァ!」
「ハァ!」
強烈な一撃が、硬化したセブンさんのガードの上から叩きつけられる。
「なんだと……」
セブンさんの皮膚は一撃で砕けていた。
「この分じゃ、壊れるのは早そうね」
ただ、その未来を俺はもっと前から知っていた。
ポーションを投げてぶつける。
ここに居る誰よりも身体能力は低いけど、一般人に比べればアスリート級だ。
先視で位置が分かってるなら、ポーションでさっさと回復させられる。
叩きつけられたポーションの瓶が割れ、中身がセブンさんに降りかかる。
「まだまだだぜクソガキ、来いよ?」
「はぁ?」
どちらも憤怒の色を露わにし、肉弾戦が始まった。
「面白そう!」
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