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二十九話 レシピ

『私はジョン・エナルド。パープルミストの一応社長(ギルドマスター)をしています。この3人は、Aランク探索者のセブンと2人はこちらのギルド『パープルミスト』で私の事務を手伝ってもらっている弁護士と秘書です』


 へぇ、こっちのセブン・レッドの方じゃないのか。

 強さなら完全にセブンに軍配が上がる。そもそもこの人は探索者じゃ無さそうだ。

 日本の一般的なギルドに比べると少し特殊な形態に見える。強い奴が頭に立つ、そうじゃないギルドは珍しい。

 そういう意味じゃ、うち(アナライズアーツ)と少し似てるかもしれないな。


「俺は天空秀です。こっちはうちの弁護士の清水。よろしくお願いします」


『まずは秘密保持契約を結んでください』


「分かりました」


 俺は清水さんとの翻訳の元、彼らと会議を始める。

 と言っても、仕事の話。


 秘密保持契約の内容は、今から俺が鑑定する物品に関して一切の情報を他言しない事。

 そして、鑑定によって得られた知識に関しても他言しない事。


 俺と清水さんはその契約書にサインする。


『それではまずは、画像をお見せします』


 そう言って、おじさんの脇に控えた二人のおじさんがタブレットを差し出して来た。

 そこに映っていた画像は、何かの巻物? を広げた物。

 しかし、日本語じゃ無くて中身を読めない。


『これは、地球上に存在するどの言語でもありません。そして、翻訳チームも動いていますが成果は芳しくありません』


 あぁ、つまり、その中身の情報を俺に鑑定して欲しいって話か。


「どこで手に入れた物で?」


『A級ダンジョンの一つ『ウロボロス』の最新到達階層です』


 人類未踏の領域から出土したダンジョンの遺産って訳か。


「すいませんが、画像に対して俺の鑑定は使えません。本物を持ってきて貰わない事にはなんとも」


 しかし、鑑定紙が使えない理由は分かったな。

 相手はただの紙だ。鑑定したってただの紙と文字で終わり。

 鑑定紙に中身の文字を翻訳するような機能は無い。


 ただ、俺の鑑定なら確かに可能性はある。

 レベルが爆発的に増加した事で、鑑定のスキルレベルが上がっている。

 今なら、鑑定紙など比較にならない程大量の情報を俺の鑑定は読み取れる。


『そうですね。分かりました』


 そうすると、秘書の男性がいかついアタッシュケースを机の上に置き、それを開いた。

 手袋をした状態で、更にガラスの中にはめこまれるように保存されている。

 絶対腐敗はさせないって感じだ。


「どうぞ」


 そのガラスケースごと、俺の方にそれを差し出す。


「言っときますが、それが破壊されそうになった時それを防ぐために俺はここにいる。だから、変な気は起こすなよ?」


 セブンはそう俺に忠告してきた。


 ただ、俺はそれに答えない。答える事ができない。


「……? どうしたよ社長さん?」


 これは……

 この情報は……


「社長?」


『ミスターアマソラ?』


「どうしたあんた。何が見えた?」


「今、読んでる最中なんでちょっと待って下さい」


 そう言うと、場は凄まじいプレッシャーの中沈黙に包まれる。

 それは、俺の顔をここに居る誰もが見たからだ。


 きっと、凄い顔をしている。

 幽霊に取りつかれてゾンビにでも化けたような顔だ。


 それほどまでに、ここに書かれている事は衝撃的な事だった。


 あぁ、けれどそれは確かに俺が求めていた物だ。


「はぁ…… 読めました」


『おぉ!!』


「社長、なんて書いてたんですか?」


 俺には意識不明の幼馴染が居る。

 今もそいつは病院に居て、もう3年程寝たきりだ。

 頭に強い障害を持ってしまっているらしく、現代医学での回復は不可能。


 そして、唯一可能性があったのがダンジョンから極々稀に発見される『神薬エリクサー』と呼称された薬品だ。

 俺はそれが出土した時のために、大金を欲していた。


 けれど、もうその必要は無くなった……


「ここに書かれてるのは、神薬エリクサーのレシピです」


 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 英語って鑑定して読めないかな? あと聞いたものに対する鑑定は無理?
[一言] 最後のエリクサーでゾワッとした!
[良い点] れしぴ [一言] おおっ 素材にもよるけど、一足飛びに足掛かりが! 契約のこともあるし、ハードルがどう変化するか 次回が楽しみです。
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