百三十一話 二人の最強
リオンが「何やってるんですか」と叫んだと同時に、俺は神気操作を発動させる。
身体を纏う様に神気を発動させれば、魔物はそれに触れているだけでダメージを受ける。
「何?」
手を離したマリアが、困惑の表情を浮かべていた。
「勇者が……三人?」
三人……その言葉から推察される答えは単純だ。
さっき俺と新藤の念話に入って来た奴は十中八九念話の能力を有しているだろう。
ってことは、このマリアって女が誰かと通信していても何の不思議はない。
この街で神気を使えるのは、俺、リオン、新藤、秋渡、千宮司の五人。
一番まずいのは新藤が出なきゃいけない様な事になってる場合だ。
鷹眼を使えば、遠方の空に大量の飛竜が見えた。
モンスターが外に出て来てる……?
このマリアという女、それに通信を乗っ取って来た奴。
それ以外のも多数のモンスターが出現。
どうなってんだ新藤……ユースとかいう奴は無能なんじゃ無かったのか。
こんな力を持ってるなんて聞いて無いぞ。
空立を使って、リオンの所まで近づき小声を話しかける。
「リオン、あいつ一対一なら勝てるか?」
リオンが俺を庇いながら戦っている事は明白だ。
じゃあ、この街一番の探索者である彼女は俺という足枷が無ければ勝てるのだろうか。
「勝ちますよ。この人、第一席次って言ってました、普通に考えたら一番強いって意味だと思います。だったら、この人の相手をするのは私以外に居ないんじゃないですか」
「俺は邪魔か?」
俺は仲間を支援するという方法で、戦闘に参加する事しかできない。
だが、鑑定情報は伝えればいい話であり、ゼニクルスがやられた以上リオンには俺をガードするという役割を熟す必要がある。
メリットとデメリットの換算が、どう見てもデメリットに傾いている。
「はい……」
「分かった。リオン……頼んだ」
「心配しないで下さい。直ぐに私も都市の防衛に回りますから」
俺の鑑定だけを信じるならリオンはマリアには勝てない。
けれど、俺は新藤と戦って自分の眼でも見えない物が存在している可能性を考えようと思った。
リオンは神気を使える。神気は鑑定できない。その戦力は未知数だ。
その力を使い、リオンがスキルを解き放てばマリアにも勝てるのかもしれない。
俺の眼と、彼女の言葉。
俺はリオンの言葉を信じる事にした。
「逃がすと思う?」
「それはこちらの台詞です」
その瞬間、リオンから黄金と白銀の魔力が溢れる。
「四神召喚・降霊召喚・付喪召喚」
リオンのスキルは特殊な芽生え方をしている。
本来は探索者はレベルアップによって、様々なスキルが順番など存在せずに発生する。
だが、リオンの『神仏召喚士』のスキルには順番が存在する。
神を呼び出すスキル。
神を人体に降霊するスキル。
神を物品に付与するスキル。
それを順番に発揮していく事で、リオンの戦闘能力は加速度的に強化される。
「四神武装」
剣に毒蛇を。
靴に火炎を。
服に流水を。
指輪に閃光を。
宿す。
恐らく、自然エネルギーと神気を融合させたエネルギーを発生操作する事ができるのは現時点では、リオンだけだ。
「へぇ、――龍爪」
一瞬で龍のかぎ爪に変形したマリアの腕が、空中を薙ぐ。
そうすると、斬撃が衝撃となってリオンへ襲い掛かった。
しかし、その斬撃はリオンの身体に当たると同時に弾けて消えた。
服に付与された水属性の神気は、そこに当たる魔力的攻撃全てを受け流すという代物だ。
だが、マリアが放った龍爪という攻撃程度の威力であれば、威力は完全にゼロにしてしまう程の防御能力を有している。
「これは、直接当てないとダメな様ね」
「貴方の相手は私です。秀君には手を出させない」
「いいわ。私も魔王軍最高戦力として、この都市の最高戦力を握り殺す義務がある物」
という事で、俺は逃げる。
鷹眼で見えた光景に映っていたモンスターはワイバーンが殆どだが五匹に一匹位の割合でその上位種のAランクモンスターも見えた。
恐らく結界は突破される。
そうなれば総力戦だ。俺の力はそっちでこそ生きる。
(通信は傍受されてるだろうが、いつでも助けを呼んでくれよ。死んだら許さない)
(了解)
リオンと一言念話で会話して、俺は迷宮都市へ走った。




