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百十九話 配信を再開する理由


 第三階層攻略から迷宮都市は少しの間お祭り騒ぎになった。

 やかましいと思わなくはないが、一つの階層の攻略というのは一般の探索者が潜れる新階層の解禁を意味する。

 本来ならば総合ギルドに選ばれたギルドしか入れなかった第三階層に、ある程度の探索者ランクがあれば入れる様になったのだ。

 それはイコールで探索者の需要と収入の拡大に繋がる。


 探索者にとっては嬉しい話なのは間違いない。

 ただ、懸念すべき点があるとすれば死亡率の上昇だ。


 第一階層にはCランクまでの多くのモンスターとBランクモンスターが出現する。

 第二階層には多くのBランクモンスターと少数のAランクモンスターが出現する。

 第三階層には多くのAランクモンスターが出現する。


 勿論Aランクしか居ないという事は無いが、それでも一般の探索者にとっては驚異的な能力を持つモンスターが大量に出現するのは事実だ。


「だから動画を再開しないといけないと思うんですよ」


 というのが斉藤さんからの提案だ。

 聖名守凛佳と一緒に録画した映像データをゼニクルスの転移で日本まで持って帰って来た。

 ゼニクルスの転移があればこういう移動も可能だ。


 不法入国ではあるが、日本政府と迷宮都市の総合ギルド双方に許可は得ている。

 清水さんがとってくれた。


 清水さんは本当に優秀だ。

 この前用事があって電話を掛けたら官僚と一緒にレストランに居るとか言ってた。

 意味が分からない。


 まぁ、分からない事は任せるとしよう。

 一目見れば有益に行動しているか不利益に行動しているか見える俺にとって、斉藤さんや清水さんを信用する事は簡単な事だ。


「まぁ、それを見越してこうやってワダツミのモンスターの情報を持ってきてくれているのだとは思いますが」


 元々動画を始めたのは金が欲しかったからだ。

 しかし、必要な量の金は手に入れたし動画以外の収入源も多く持っている。

 正直言ってしまえば、俺の個人的な目的の中に動画を配信しなければならない理由は存在しない。


 だが、やはり第三階層の階層主はエリクサーを所持していなかった。

 橘さんが言っていた事が本当なら、階層主は一体につき一本のエリクサーを所持していると考えられる。

 なら、第四階層の攻略は必至。しかもその階層主にエリクサーを使う暇のない程圧倒しなければならない。


 第四階層を突破するのが俺じゃ無くてもいい。

 勿論、俺がこの手でエリクサーを手に入れるのが一番確実だが、最悪エリクサーを手に入れた探索者と交渉して譲ってもらう事も可能だろう。


 ワダツミというダンジョンを見て居れば分かる事がある。

 このダンジョンはAランクダンジョン以下で行われる探索、狩猟とは規模や規格や設計自体が異なっている。

 ここで行われるのは『戦争』だ。


 だったら、一人でも多くの探索者が必要だ。

 それも最低でもBランク程度に遅れを取らないレベルの戦力が。

 結局最初に斉藤さんが言っていた通りだ。より効率よく探索者を強くし、あらゆるクラスの可能性を精査する事。

 それが人類が強くなるために必要な事だ。


「ワダツミのモンスターの動画は、これから毎日持ってきます」


「はい。既に受け取っている分も合わせて編集した傍から投稿していきましょう。よろしいですか?」


「お願いします」


「了解です。知り合いの編集者を集めて大急ぎで準備しましょう」


 俺はゼニクルスの転移によって迷宮都市に戻った。



 朔間疑徒は現在でも聖リント教会のギルドマスターを続けている。

 聖リント教会とアナライズアーツは協力関係となった。まぁ、法律的には俺が聖リント教会という会社の株を少々持っているという状態だ。

 立場的には俺が聖リント教会に意見できる立場になっている。


 聖リント教会は現状の戦力を見れば世界最大戦力を保有する探索者の集団だ。

 それを解体した場合、バラバラになった聖リント教会所属探索者がどういう動きをするか予想できない。

 それに、聖リント教会という戦力を好きに使えるという事実はでかい。


 後、昨日あたりに総合ギルドに新規探索者が一人登録を行った。

 そいつの名前は新藤真。クラスは勇者でレベルは100オーバーだったらしい。

 そいつは聖女と共にワダツミに潜り、日夜莫大な量の素材を持ち帰っているようだ。


 それに『詐欺』の応用に当たる【階位昇華】は偉大な発明だ。

 これを使えば探索者のレベルを最大で二倍まで上昇させる事ができる。

 勇者として、そして教皇として、新藤にはまだ働いてもらう事にした。

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