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十話 編成理由


 ワイバーンを倒した経験値が俺に入って来た。

 傷なんて一つも付けてないし、魔法とかで補助した訳でもないのにだ。


「秀君凄いですね。ただの荷物持ちが大活躍ですよ」


「そうかな? 皆が強かっただけだよ。それに……」


「ん? どうかしましたか?」


「いいや、何でもないよ」


 この場で一番強いのは……。いや、この話はやめておこう。


 やっぱり、鑑定士は情報的な補助をする事でも経験値を獲得する事ができるのかもしれない。


「やっぱり、君を連れて来たのは正解だったみたいね」


 戦闘終了時、一息ついた合間に黒峰静香が俺にそう言って話しかけて来た。


「え?」


「君の鑑定の力が役に立った」


 まさか、こうなる事を解った上で俺をこのメンバーに編成したとでもいうのだろうか。

 いや、戦闘中に感じた黒峰静香の視線は確かに「お前の出番だ」とでも言いたげな物だった。


 ネットで募集された時点でスキルの事は全て書き込んで提出している。

 まぁ、その時点で得ていたスキルに限った話ではあるが。


 というか、チームの皆が直ぐに俺の声に反応して従ってくれたのは予めこの人が俺の『鑑定』の可能性について話していたからって事か。

 それなら確かに高が荷物持ちの指示に従ってくれた事も納得できる。


「俺の『収納』が目当てだったと思ってましたけど、鑑定の方だったんですね」


「いいえ、両方よ。それにさっき見せた3つ目も。これから先も期待してるわ」


 そこまで考えて編成を組んだって事は、多分リオンさんの力にも気が付いているのか。

 このチーム、もしかしたら……


 休憩が終わり、攻略が再開される。

 そこからはワイバーン以外にもBランクに位置する魔物が多く出現し、俺の力はその度に発揮された。



『経験値を130獲得』

『経験値を160獲得』

『経験値を180獲得』

『経験値を200獲得』

『経験値を230獲得』

『レベルが1上昇しました』

『レベルが1上昇しました』

………………

…………

……



 職業本クラスブックの機能をオンにしてみると、そんな音声がモンスターが倒されるたびに俺の脳内に響いていた。

 一体あたりの経験値量が上がっている。

 これは、多分俺の活躍度の評価がチーム全体から上がっているからだろうか。


 少なくとも、Bランクの魔物にそこまでの経験値量の差は無いはずだ。

 俺に貰えてるのなんて全体の最高でも十分の一以下だろうし。


 それでも、未だレベル30にすらなっていない俺に取っては多大な経験値量だ。

 レベルも凄まじい速さで上がっていく。


 スキルレベルは、レベル5毎に全てのスキルのレベルが1上がる。

 更に10毎に、そのクラスの新たなスキルを獲得できる。

 今俺が持っているスキルは『鑑定』『収納』『観察』の3つだが、4つ目のスキルはもっと直接的に戦闘に介入できるスキルが欲しい物だ。


 階層数はワイバーンが出て来た時点で10を超え、そろそろ15階層に到達しようとしていた。

 複数のBランクが出現したが、俺の鑑定による情報もあってか冷静に対処できている様に見える。


 ただ、やはり傷を負う人は少しずつ、しかし着実に増えて行っている。

 死者は出ていないが、それでも綱渡りの綱がどんどん細くなっていっているようなそんな気がする。


 そんな時だった。


 オーガと呼ばれるBランク魔物が拳大の石を全力で投擲した。


 それは前衛をすり抜け、後衛すらすり抜け、そして俺たち最後尾まで到達しようとしていた。

 俺はその軌道を観察して、その石がこのままではリオンさんに当たると予測できた。


 身体は勝手に動いた。


「リオン!」


「え……?」


 彼女を押すように軌道からずらす、しかしそれはつまり俺が軌道上に躍り出るという事。


 思考が巡る。

 何をすればいい。当たったら絶対死ぬ。そんな剛速球だ。

 どうしたら、生き残れる。


 俺は、腕を前に出す。


 いいや、腕の一本位貫通して胴体か顔面にぶち当たる威力だ。


 だったら。


「収納!」


 俺は、石が突き出した掌に触れた瞬間、その石に対して収納を発動する。


「ぐっ!」


 しかし、威力を完全に殺せたわけじゃない。

 タイミングが少し遅かった。


 俺の腕が弾けるように、後ろへ飛んだ。


 鮮血が舞い、左腕の痛み以外の感覚が消えた。


「吹き飛ばされなかっただけマシか」


 腕は一応俺の左についている。

 けれど、完全に骨が砕けてる。


「秀君……なんで……?」


 決まってるだろ。俺は生きてる。俺が何もしなかったら多分君は死んでる。

 そう思ったからだ。


「許さない!」


 怒り狂ったような形相で、彼女は石を投げたオーガを睨みつけた。


 その瞬間、彼女が握っていた剣の刀身に黄金色の魔力が宿る。


 高速の斬撃が、オーガにぶち当たる。

 本来の射程を完全に無視して魔法のように剣戟を飛ばし、オーガは真っ二つに切り裂かれた。



「面白そう!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初から鑑定目当てだったんならどこまで何ができるかっていうのを直接把握しておくのがトップの責務じゃないんですかね
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