思い出のBB弾
小学校の帰り道や犬の散歩の時に、いつものルートから外れて、ついつい道端に落ちている物を拾い集めてしまう、という行動を取ったことがある人は、わりと多いのではないのだろうか? と、私は思う。何故なら私がそうだったからだ。
え? 一緒にするな?
なんというか、そういう方には申し訳ないが、子供は、価値のないガラクタを宝に見立てて、拾い集めてしまうという、『宝探しの冒険』的な好奇心が、少なからずあると思うのだ。
好奇心が身を滅ぼす、という言葉があるが、確かに子供にとって世の中には危険が沢山あり、その通りだと思う反面、子供の感覚からいって、そういった遊びはかなり重要なことなのだとも思う。
例えば某有名アニメの『と○りのト○ロ』のめいちゃんは、その好奇心のおかげで、点々と落ちているドングリを夢中で拾いながら追っていって、素敵な森の妖精に出会えたわけだけど、森の妖精がとんでもない猛獣だったら終わっていた、という危うさも感じるわけだ。
しかし、そんな危機意識的な話は、子供心には関係ないのである。
例えが少しおかしくなってしまったが、めいちゃんがドングリを拾っていたように、私の場合はBB弾を拾っていた、という話。
BB弾ってなんぞや? という方もいるかもしれないので、軽く説明をば。
私もそんなに詳しくないので、適当な説明になってしまうが、『BB弾』とは、実際に弾を撃てるモデルガンの弾のことで、イクラ(鮭の卵)くらいの大きさだと思って貰えれば分かり易いと思う。
近所の子供達か、お兄さん達がモデルガンで遊んだのだろうけど、私が子供の頃には、BB弾がわりとそこら中の道端に落ちていたのだ。
BB弾はカラフルに色々な種類の色があって、子供の宝探し的な好奇心を煽るのに充分な魅力があった。
もっとあったと思うが、白、黒、ピンク、オレンジ、黄色、緑、半透明、等の色があったのを覚えている。
BB弾を拾い集めた結果、サバゲーの妖精とか、モデルガンの妖精に出会えたわけではないが、透明色等の珍しい色を拾って、兄貴と自慢し合ったものだ。
「普通に店で買えば良いのでは?」と、思う方もいるだろうし、大人になった私もそう思うのだが、きっとそれだと、すぐに飽きていたはずだ。
探して拾い集めるというプロセスがあってこそ、価値のあることだったのだと思う。
◆◇◆◇
さて、どうしておっさんのしょうもない思い出話を書こうと思ったのかと言えば、うちの娘共にも拾い癖があり、玄関先やポストの中に拾ってきた綺麗な石を置いたりして、よく妻に怒られていたり、先日長女が謎の歌を歌ったことによって、記憶が刺激されたからだ。
歌のタイトルは無いが、つけるとすれば、
『緑のBB玉』であろうか。
意味が分からないと思うので、遡って説明して行こうと思うが、何故か娘は、『BB弾』のことを『BB玉』と呼ぶ。
と、いうことを先に言っておく。
今から6年程前の頃だったか、長女がまだ保育園児で、二女が産まれてなかった頃の話だ。
娘が通っていた保育園の近くに神社があるのだけれど、そこでサバゲーか何かは分からないが、兎に角モデルガンで遊んでいる不届きものがいるらしく、神社の境内にはチラホラとBB弾が落ちているとの噂。
保育園の行事で神社を訪れた際、娘がBB弾を持ち帰ってきたのだから、本当のことなのだろう。
そして娘が言うには、「びーびーだま、もっと欲しいけど、上手く見つけられないから、パパも手伝って」とのこと。
血は争えない、と思いつつ、そうして私は娘と手を繋いで、神社に向かうこととなったのである。BB弾を探しに。
なんで良い年したおっさんが、神社の境内で屈んで探し物をしないといけないのか? 不審者に思われないだろうか? 娘を言い訳にしようにも、BB弾を上手く見付けられず泣き出してしまうし、これは尚更まずいのでは? 等と考えつつ、なんとか20粒くらいのBB弾の収穫があったと記憶している。
帰り道、娘を肩車していたら、それを羨ましがった娘のクラスメイトの男の子が、肩車を羨ましがってせがんできたので、やってあげたら、オシッコ臭かったのも何故か覚えている。
娘は集まったBB弾を、お菓子の箱に入れて、玩具として遊ぶようになったが、あんな小さい粒が無くなってしまうのに、そう時間はかからなかったのであった。
――そして現在――
その時のBB弾が一粒出てきたのだが、そのBB弾を巡って、長女と二女でキャットファイトが始り、妻から雷が落ちた、という話はどうでも良いことかもしれないが、長女はその『緑のBB玉』を見付けたのがよっぽど嬉しかったらしく、入浴時に浴室にまで持ち込む始末。
その時に、即興で歌った歌が、
「緑のびーびーだ~まを、見付けたよ♪」
だったのである。
翌日の入浴時に、そのBB弾を持っていなかった娘に、私はこう尋ねた。
「BB弾もう飽きちゃったの?」
そうするとこう返ってってきたのである。
「緑のびーびーだ~まを、無くしたよ♪」
二女も一緒になって、ノリノリで歌っている。
……どっちでも良かったんかい!
以上、しょうもないお話でした。