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終焉世界の探索者  作者: 雷炎
4章:第一次人魔大戦
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全知を求める簒奪の求道者 其の八

お久しぶりです。生きてます。

 戦場は混沌を極め、敵も味方も何もかもが入り乱れていた。戦場全域に広がった《召喚》の魔法陣によってそこかしこにラブマシーンが奪った権限体(アバター)が溢れ返り、唐突に背後や横合いから攻撃を受ける事態が多発している。ならばこっちが大きく不利なのかと言えばそんなことは無い。空から降り注ぐ無数のスーパーチャット(バフ)BGM(バフ)コメント(バフ)。世界中から届けられる強化が相互に阿保みたいな相乗効果を引き起こして探索者一人一人がそこらのダンジョンボス一人なら瞬殺できる程の強さを得ている。


 が、それでも敵は兎に角数が多い。大神さんの超大規模霊術で一掃しようとすればすかさずラブマシーンからの妨害が入り、ラブマシーン本体に集中しようにも権限体(アバター)があまりにも鬱陶しい。ならばどうするか。そこに俺の神様(オモイカネ)は最高で最低な提案を運んできた。


 常世思金神(オモイカネ):じゃ、今言ったとおりにやってね♪


「クソが!これ失敗したら後で死ぬほど恨まれるパターンの奴じゃねえか」


 常世思金神(オモイカネ):そんなことないよ?全てを完璧に熟せば君は間違いなく【英雄】さ♪


「ああクソ!やってやる。やってやるよ!」


 落ち着け鈴木亮一郎。迷ってる時間も無いんだ。何も絶対不可能って訳じゃねえんだ。失敗しなきゃいい。それだけだ。


「すぅ、はー」


 深呼吸。行くぞ。


「瞬刻思考〈主観加速(ベロシティ)〉」


 瞬間。世界が止まる。『無窮歩法(タキオンステップ)』で超加速して光速に至っているのではない。今の俺は瞬刻思考の思考加速以外で何も能力を発動していない。だが今の俺はこの静止した世界を自由に動くことができる。


主観加速(ベロシティ)〉はその名に反して()()()()()()()()()。上手く説明できないがこれは、()()()()()()()()()()()()()()だ。


 俺の目で見て相手がゆっくりと動くのならそれは相手が遅いのだ。

 俺の目で見て相手が素早く動くのならそれは相手が速いのだ。

 俺は加速することも減速することも無く、ただ世界側が帳尻を合わせる能力。


 故にこの能力の名は【異法能力(アナザールール)】異なる法則を敷き、世界にそれを強制する違法(チート)能力。


 この力の発動時、俺は世界で唯一の存在となる。相対速度で全てを規定し、万象一切をそれに従わせる。ただしこんなぶっ壊れ能力、当然デメリットはある。


 息を止めている間。それがこの能力の持続時間だ。俺が少しでも空気を求めて息を吸った瞬間。世界は元に戻り、更に既に発動していた全ての能力が解除される。


 常世思金神(オモイカネ):それでも君は成し遂げるさ。行ってきな、亮君♪


(おう)


 虚霊術が第三階梯《虚空纏》発動。刀に虚無を付加。

 虚霊術が第一階梯《虚空玉》発動。霊力によるゴリ押しで常世思金神(オモイカネ)の示す255のポイントに同時に形成。

 欲しいものリスト(アマゾン)から霊力ポーションを呼び出し補給。

 急回復した霊力で虚霊術が第六階梯《虚空天》を発動。

 握りしめた刀を天に掲げ、地に振り下ろす。


 常世思金神(オモイカネ):本当はもっと大人数で使う物なんだけど、亮君ならいけるでしょ。負荷は凄いけどね♪


 この神いつか絶対泣かす。


 常世思金神(オモイカネ):今君は声出せないから僕が代わりに宣言してあげるよ。


 そりゃどうも。


 常世思金神(オモイカネ)()()霊術が第()()階梯


 虚無で満ちた空と255の《虚空玉》どうしが繋がり模様を描く。


 常世思金神(オモイカネ):《増結消失オーバーフロー・ロスト


 この霊術に音は無い。眼に見える大きな変化は無い。それでもこれでこの儀式は結実した。255の《虚空玉》が消え去り空も元の混沌とした色合いに戻る。

 霊力は枯渇し、息もそろそろ切れる。だがそれでも、あと一度しか使えないこの能力。有効活用しない手はない。


 やれる事はやれるだけやらせて貰うぞラブマシーン。






「そして時は動き出す。……なんてな」


「は?」


『ガァッ!?』


 唐突にこんな事になれば流石の【覇王】も【魔王】もびっくりするだろう。突如眼前に現れた俺、そして急に感じるダメージ。極めつけは()()()()()()()()()()()


『オノレ【英雄】何ヲシタ!』


「別にぃ~?お前があまりにもすっとろいからその首切り落としてやったんだよ。みりゃ分かるだろ」


『チッ!ナラバ……ナニ?』


「出せないだろ。権限体(アバター)


 既に足元の《召喚》の魔法陣は機能していない。厳密にはどれだけ魔力を注いでも何処かへ消え去って発動しないのだ。


「魔法陣を出し直しても無駄だぜ?一定時間とは言えこの霊術は術そのものの発動を禁止する」


 他の魔術なら問題なく使われるが俺達にとって最大の脅威は無限に(アバター)を召喚する《召喚》の魔術だった。


「さて、もうこれで本当にお前一人だ。が、だからと言って折れる様な奴が【魔王】たりえる訳がねえ。決着と行こうぜ」


 ラブマシーンに刃を向ける。周囲の権限体(アバター)を倒し終わった探索者が続々と集まって来る。

 戦力差は完全に傾いた。だが眼前の【魔王】の恐ろしさは一ミリだってかけちゃいない。まだ何かある。それだけは間違いない。そもそも首を三つともおとしてまだ喋ってんだ。尋常な方法では倒せないのだろう。


『オ前達ノ言葉ニコンナモノガアッタナ』


「なに?」


『巨大化ハ負ケフラグ』


「は?……てめえまさか!」


『証明スルト言イ。嘘偽リナクコレガ我ガ最後ノ形態ダ』


最終形態(ファイナル・フェイズ)


「退避いぃぃぃ!?」


 落とした奴の首から血では無く真っ黒な魔法陣が染み出してくる。それは奴の身体を飲み込み、周囲の地面の上に展開されていく。どう見たって激やばだ。《増結消失オーバーフロー・ロスト》で止めようにも広がり続ける魔法陣には使えないし霊力回復も間に合わねえ。

 大神さんが霊術を叩き込んだがまるで答えた様子も無い。『変身中は無敵です』ってか?ざけんなここは現実だぞ。


 どんな妨害も意に帰さず遂に魔法陣は完成して発動した。


 最初に感じたのは振動。まるで雪崩の前兆の様に轟音を伴う振動が生じた。

 次に目にしたのは“黒”。魔法陣から真っ黒な液体が津波の様に吹きだし天へと上った。黒い流体は落下することなく空中に溜まった。

 そして流体は二つに分かれた。一部が巨大な漆黒の球体となり、残りがそれを包み込み、上部がまるで炎の様に揺らめいた。外側の流体は中の漆黒の球体を透かして見える。それを一言で言い表すならそれは……。


「人魂?」


 誰かがそう言った。そう、人魂だ。画像検索したら五つ以内に見つかりそうなくらい如何にもな人魂だ。


『さて諸君』


「声が」


 恐らく人魂から声が聞こえる。


『これが我が最終形態。従える者は無く、生き物の形すら持たない亡霊が如き存在。それが我【(いち)なる簒奪の魔王】である』


 人魂はその見た目通りに生物的な反応をすることなく淡々と言葉を紡ぐ。


『我は人に仇なし、国を崩し、世界を壊し、極点を目指すモノである』


 それは【魔王】が人類へと最初に行った宣戦布告。決して相容れることないと言う宣言だった。




『人よ、我が糧となり消え逝くことを許す』




エタってからの更新が丁度一年ぶりだったのは流石に偶然です。

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